レントゲンの被ばく量と発がんリスクの関係
では実際にX線検査ではどれくらい被ばくするのでしょうか?
胸部のX線検査の1回の量は、およそ0.06mSv程度(ミリシーベルト)とされています。我々の領域で例えるならば、腰椎であれば撮影方向などによる差もありますが、およそ1.3~5.6mSv程度とされています。
そもそも、私たちは普通に暮らしているだけで、自然と放射線を浴びています。宇宙から届く宇宙線が年間約0.3mSv、大地から受ける自然放射線が約0.33mSv、食べ物から約0.99mSvなどなど、日本では年間約2.1mSvの自然放射線を浴びていると推測されます。低線量の放射線による細胞損傷は修復されたため、この程度の放射線でがんになる人はまずいないと考えられます。
がんのリスクになるであろうと考えられている放射線量は、短時間に100mSv以上とされています。この量を超え、被ばく量が増加するのに比例して、がんを発症するリスクがわずかずつ高まっていきます。また、短時間にたくさんの放射線を被ばくするよりも長期間にわたって少しずつ放射線を被ばくするほうが、発がんなどへの影響は小さいことがわかっています。
これらのことから、現状行われているX線検査程度の被ばくでは、がんのリスクを心配する必要はほぼないということになります。
被ばくを過度に心配してX線検査を受けなかったり、検査自体を遅らせたりしていると、病気の診断や悪化の発見が遅れる恐れがあり、そこから生じる健康被害のほうがはるかに大きいと考えます。必要とされたときには、迷わず撮影を受けることをおすすめします。
ちなみに医師や診療放射線技師など、職業上放射線作業を行う者たちの線量限度は年間50
mSv以下、かつ5年間で100mSv以下と設定されています。
患者さんよりも我々のほうが普段から放射線を浴びていますが、特に気にしている者はいません。リスクは正しく評価することが重要です。