『怒れる老人 あなたにもある老害因子』 (安藤俊介/産業編集センター)第1回【全3回】
「老害」という言葉を目にする機会が増えました。周囲に何らかの迷惑を与えやすい年長者のことを意味するとされ、高齢者と呼ばれる年齢ではなくとも、「老害」にはなり得ます。歳を重ねて丸くなりたいはずが、なぜ「老害」となってしまうのでしょうか。『怒れる老人 あなたにもある老害因子』の著者で、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会ファウンダーの安藤俊介氏は「怒りっぽくなるのも、ならないのも自分で選ぶことができる」と言います。本稿で「人はなぜ怒るのか」を知り、「丸く、穏やかになる未来」について考えてみませんか。
※本記事は安藤俊介著の書籍『怒れる老人 あなたにもある老害因子』(産業編集センター)から一部抜粋・編集しました。
「怒られる=あなたへの攻撃」とは限らない
誰でも怒られたら嫌な気持ちになります。それはアンガーマネジメントに長年取り組んでいる私であっても同じことです。ただ、アンガーマネジメントを知ることで、それなりに怒っている人、キレる人と上手に付き合うことができるようになりました。
「上手に付き合う」とは、怒りをぶつけてくる人を軽くいなすことができたり、落ち着いてもらうことができたり、話ができるようになったり、あるいは関わらなくてすむようになるといった意味です。
どんなに真面目に生きていても、自分に非が全くなくても、もらい事故のように突然誰かから怒りをぶつけられることはあります。
なぜ怒りのもらい事故のようなことが起きてしまうのかと言えば、怒りは持ち運び可能な感情であって、矛先を固定しないという性質があるからです。それはつまり八つ当たりのことです。
例えば会社で部下に怒りを感じたとします。その部下を叱れば、そこでその怒りは終了するはずですが、そうはなりません。アンガーマネジメントができないと、その怒りを持ち続けることになります。その人はその怒りを持ったまま家に帰ります。そして家に帰って気に入らないことがあれば、本来、家族には関係のないことですが、その怒りを家族にぶつけてしまうのです。
その逆も然りで、家庭で持った怒りを会社やお店などに持ち運び、そこで部下、店員といった、もともとの怒りには直接関係のない人達を使って晴らそうとします。
職場のパワーハラスメント問題は大きな社会問題になっていますが、パワハラ加害者は会社とは別の場所で生まれた怒りを会社に持ち運んできて、ぶつけやすい部下などの対象に向けている可能性はかなり高いと考えられています。
また、同様に大きな社会問題になっているカスタマーハラスメントも、同じ仕組みの下に生まれていると考えています。
自分に向けられた怒りは自分には関係ないというのはよくあることです。たまたま目の前にあなたがいたから、怒りをぶつけられたのであって、あなたを攻撃したくて怒っているとは限らないのです。