その怒り、本当にあなたへのもの? 理不尽に怒られたときに意識したい「事実」と「思い込み」の違い

理不尽な怒りの受け止め方

自分に非があり怒りを向けられたのであれば、反省したり、同じことが起きないように気をつけるとして、自分に全く非のないことで、怒りをぶつけられるような場合であれば、その怒りを受け止める必要は全くありません。

ただ多くの人は、怒られるからには自分に何らかの非があるのではないかと思い、相手の怒りを受け止めようとしてしまいます。結果、落ち込んだり、嫌な気持ちを手放すことができず長いこと苦しんでしまうのです。怒られることに苦手意識のある人はなおさらそう思う傾向があります。

怒られる時に相手の言っていることをよく聞いてみてください。すると次の2つがあることがわかります。

1.事実
2.思い込み

「1.事実」は誰がどう見ても動かしがたいものです。例えば、あなたが疲れて優先席に座っていたとします。そこに高齢者が来て、「ここは優先席だ! あんたのような人は座ってはいけないんだ!」と怒鳴ってきたとします。「事実」はあなたが優先席に座っていたことです。ですから、優先席に座っていたことは事実として受け止めます。その点についてはまあ確かにそうだなと。一方で「座ってはいけない」という言い分については、それは高齢者側の言い分です。優先席の意図はあくまでも譲り合うことにあって、高齢者、障害者、妊婦以外が座ってはいけないということではありません。この高齢者は優先席に関して間違った思い込みを持ち怒っているのです。「あんたのような人は座ってはいけない!」の部分については事実ではありませんから、聞き流してもいい部分と言えます。優先席に座った自分を恥じたり、怒られたことで罪悪感などを持つ必要は全くありません。

あるいは介護中の親にお茶を出したら、「こんなまずいお茶を出すなんて、バカにしているのか!」と怒ったとします。お茶がまずいかどうかはごく主観的なことです。またバカにする気なんてさらさらありません。ということであれば、この場合、相手の怒りについては何も聞かなくてもいいと言えます。あえて言えば、怒っているのは確かなので、怒っているのだなと思うだけでいいのです。それを「あぁ、親を怒らせてしまった」「自分の配慮が足りなかったのかもしれない」と自己嫌悪に陥ってしまうと、もうメンタルがもちません。思い込みを聞いていたら、全部自分が悪いと受け止めることになりかねないのです。

聞かなければいけないのは事実だけ。事実でないことは聞く必要はない。そういう気持ちでいると、人から怒りをぶつけられても落ち込まずに済みます。

実際の会話の中で、事実と思い込みを分けるのは結構大変ではあるのですが、意識して聞くことを続けていれば、その切り分けができるようになりますので、ぜひ試してみてください。

 

安藤俊介
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会ファウンダー。新潟産業大学客員教授。アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。アンガーマネジメントの理論、技術をアメリカから導入し、教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどを行っている。ナショナルアンガーマネジメント協会では15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルにアジア人としてただ一人選ばれている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『私は正しい その正義感が怒りにつながる』(産業編集センター)等がある。著作はアメリカ、中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムでも翻訳され累計65万部を超える。

※本記事は安藤俊介著の書籍『怒れる老人 あなたにもある老害因子』(産業編集センター)から一部抜粋・編集しました。

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