「やっぱり母は認知症なんだ」預金管理もままならず、整然としていた部屋は荒れ放題/アルツフルデイズ

ワフウフ著『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』からエピソードを厳選してお届けします。

浮気と金銭問題が原因で、両親は家庭内別居中。そんな中、母(あーちゃん)はお金や薬の管理ができなくなり、アルツハイマー型認知症と診断されます。これ幸いと、あの手この手で母の個人財産の独り占めを企てる、悪魔のような父(たんたん)から母を守り、極秘で施設への入居を計画するワフウフさんと姉(なーにゃん)。いつかは訪れる肉親の介護問題をリアルに考えさせられたかと思うと、ありえないトラブルが続出し、グイグイと引き込まれる、涙と笑いの介護ストーリーをお届けします。

※本記事はワフウフ著の書籍『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』から一部抜粋・編集しました。

【前回】70代母の認知症「薬を出されたのに記憶なし!?」一人で通院できない母をどうしよう?

いつも整理整頓されていた母の部屋が知らぬ間に乱雑になり、通帳はおろか部屋の管理もできなくなっていた。これが、認知症なんだ。

わからなくなる前にと思ったが時すでに遅し

2017年7月13日。

基本的に病院の付添いにはなーにゃんとワフウフがひとりずつ代わりばんこに行っていたが、その日は2人で行った。あーちゃんにお金の話をするために。

あーちゃんは色々な銀行にちょこちょこ預金があり、その当時すでに管理しきれていなかった(金利の良い他の銀行に預金を移したあとも、元の銀行に預金があると思っていたり)。

認知症と診断されてからは日が浅いけど、思った以上に状態が悪いあーちゃん。

しょっちゅうあれがない、これがないと騒いでいて、いつも何かを探しているような状態だったので、あまりあちこちに預金を持っているより、もう少しまとめた方が管理しやすいのではないかとワフウフとなーにゃんは思ったのだ。

そして、どうせ金利も恐ろしく低いし、普通預金にしておいた方が勝手が良いのではないかと思った。

もしもあーちゃんが急に倒れたり身動きが取れなくなるようなことがあった時には代わりにお金を引き出しに行ったりも出来るしね。

あーちゃんはワフウフたちの提案に幸いすんなり納得してくれたので、次回の注射の日である20日、病院の帰りにあーちゃんの自宅の最寄り駅にある銀行をふたつ回って、証書や定期預金を普通預金にまとめることにした。

そして約束の7月20日。

病院で注射を済ませたあと、銀行を回るために、ふたつの銀行分の通帳や証書などを持ってきたかあーちゃんに聞いた。すると......

「それがねえ......見つからないのよ......」

ああ、やっぱりもう、ダメだったか。

いつもいつも、何かを探している状態のあーちゃんだから、通帳をまとめて少なくして管理しやすく......と思ったけど、まとめるも何も、手持ちの通帳も証書もすでに見つけられなくなっていた。

7月26日。

なくなった通帳や証書を探すために実家に行った。

あーちゃんの部屋へ行き、ドアを開けて言葉を失った。

いつもきちんと整頓されていたあーちゃんの部屋がひどく雑然としている。

もう7月も終わりだというのに、カーテンレールに冬物のコートを掛けっぱなし。

それも、ひとつのハンガーに何枚ものコートがぐちゃぐちゃに重ねてかけてある。

クローゼットは開けっ放しで山のように洋服が積み重なっている。

ベッドの枕元には薬の袋。でも飲みかけだったり、丸々飲んでない分包の袋も散らばっている。

鏡台にもあちこちの棚にも、新聞の切り抜きや広告、請求書、病院の薬の明細書やレシートが置かれ、引き出しもぐちゃぐちゃに何でも突っ込んである。

明らかに使用済みのティッシュやマスクまであちこちから出てくる。

押入れにも天袋にもベッドの下の収納にも、物凄い数の5箱組のボックスティッシュがこれでもかってくらい入っている。

ああ、あーちゃんはやっぱり認知症なんだなと改めて思った。

要るものと要らなそうなもの(ずいぶん前の広告とか)を分けて整理しながら、大事な物をしまいそうな場所を探した。

黙々と部屋で動き回る娘たちを見ていたあーちゃんが不思議そうに言った。

「......あなたたちは何を探しているの?」

忘れちゃった!!2週に渡って家に通帳を探しに行くことを説明して来たのに、ワフウフたちがどうして家に来たのか、あーちゃん忘れちゃったよ!! 

6畳ほどのあーちゃんの部屋をワフウフとなーにゃんの2人掛かりで整理しつつ、3時間ほどかけて通帳を探したのだが、その間あーちゃんに何を探しているのか4回聞かれたよ......。

「やっぱり母は認知症なんだ」預金管理もままならず、整然としていた部屋は荒れ放題/アルツフルデイズ 5-1.jpg

A銀行の証書を見つけることは出来なかったがA銀行の通帳が出てきた(この存在は知らなかった)。

B銀行の通帳はなんと、あーちゃんがいつのまにかどこからか持ってきた。

「通帳ってこれのこと?」

見つからないんじゃなかったのかーい!

存在を知らなかったC銀行の通帳と、たんたん名義のC銀行の通帳も出てきた。

ゴミに混ざって無造作にいくつも置かれていた封筒に入っていた現金はかなりまとまった額になった。

どう考えてもあーちゃんが自分で封筒を置いた場所を把握しているとは思えなかったので、せめて3つくらいにまとめようとしたのだけど、何故だかまとめることをひどく嫌がるあーちゃん。

「そのままにしておいて! わからなくなっちゃうわ!」

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もうとっくにわからなくなってるじゃん!!

期限切れのサービス券や何ヶ月も前の広告など、要らないであろう物を捨てようとしてもいちいち「捨てないで!」「それはまだ使うから」と血相を変えて抵抗する。

認知症あるあるだなあ......。

あーちゃんが認知症だってわかっていても、なんだかガックリ来る。

部屋の状態からいっても、もう複数の通帳の管理を出来るような状態ではないと判断して、なーにゃんがA銀行とB銀行の通帳を預かることにして持ち帰り、C銀行の通帳をあーちゃんに自分で管理してもらうことにした(あーちゃんが拒みそうだったので、「定期預金の満期が近いのでそれを待って普通預金に変えに行こうね、忘れないように預かっておくね」と説得した)。

 

ワフウフ

アラフィフの主婦。昭和を引きずる夫、大学生の長男長女の四人家族。実母のアルツハイマー型認知症発覚をきっかけに、忘備録として2018年よりAmebaブログ「アルツフルデイズ」を開始。「介護日記」ジャンルで人気を博す。2019年一般の部でブログ・オブ・ザ・イヤー受賞。2020年に公式トップブロガーに認定される。実母の生活のフォローに姉とふたりで四苦八苦する毎日を、イラストと笑いと毒をほんのり混ぜながらブログに綴る。

※この記事は『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』(ワフウフ/フォレスト出版)からの抜粋です。
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