ワフウフ著『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』からエピソードを厳選してお届けします。
浮気と金銭問題が原因で、両親は家庭内別居中。そんな中、母(あーちゃん)はお金や薬の管理ができなくなり、アルツハイマー型認知症と診断されます。これ幸いと、あの手この手で母の個人財産の独り占めを企てる、悪魔のような父(たんたん)から母を守り、極秘で施設への入居を計画するワフウフさんと姉(なーにゃん)。いつかは訪れる肉親の介護問題をリアルに考えさせられたかと思うと、ありえないトラブルが続出し、グイグイと引き込まれる、涙と笑いの介護ストーリーをお届けします。
※本記事はワフウフ著の書籍『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』から一部抜粋・編集しました。
預金管理ができない、同じ話を繰り返す、今いる場所がわからない?どうも母の言動がおかしい!どうやって検査に連れ出したらいい?
突然過ぎて途方に暮れた始まりのはじまり
2017年3月、それは母・あーちゃんからの「貸金庫にお金が全然入っていないのよ!」という1本の電話から始まった。
色々複雑な事情があり、実家で父・たんたんと暮らしているあーちゃんのお金に関しては、どこにいくらぐらいあるのかを姉・なーにゃんも私・ワフウフも把握していた。
そして、なーにゃんとワフウフで預かっているものも一部あった。
あーちゃんは貸金庫にまとまった現金を持っていたはずだ。
それが全てなくなったと言うのだ。
それで、お金が必要だからワフウフが預かっているものからお金をおろしたいと言うのであーちゃんと会うことになった。
本人のものなのだから、あーちゃんのお金をおろすのはもちろん構わない。
だけど、どうして貸金庫の現金がなくなってしまったのか?
貸金庫のお金を取り出せるのは本人だけなのに......。
「貸金庫にお金がない」「どうしてないのかわからない」と繰り返すあーちゃんに、ワフウフが「〇〇に××があるでしょ、□□に△△があるでしょ」と、ひとつずつ預金やお金のある場所を確認していると、突然あーちゃんが、「そうだわ、言っておかなくちゃ!もしも私に何かあった時のために、××に◯◯円くらい置いてあるからね!」と、言い出した。
それは、それまでなーにゃんもワフウフも把握していなかったお金で、しかも、貸金庫に入っていたお金とほぼ同額だった......。
絶対それ、貸金庫に入っていたお金でしょ!
しかし、本人に何度確認しても貸金庫には行っていない、現金を動かしていないの一点張り。
その日はとりあえずワフウフが預かっていたあーちゃんの預金からお金をおろして渡し、あーちゃんはそれで満足したようだったが、どう考えても本人が貸金庫からお金を家に持って行ったとしか思えず、それをまったく覚えていないのだとしたらあまりにもおかしいのではないかとワフウフは不安でいっぱいになった。
ワフウフはすぐさまなーにゃんに相談した。
実は、あーちゃんと会った日、貸金庫のこと以外でもあーちゃんがおかしいことがいくつかあったのだ。
(1)同じ話を何度もする。
昔から父への愚痴は同じ話を何百回も聞かされてきたけれども、この日は話し終わったと思ったら全く同じ内容の話を全く同じフレーズで話し出したのだ。
それも2、3回どころじゃない回数で。
ランチをしている時、隣のテーブルに座っていた人がちらちらとこちらを見るくらい、壊れたレコードのようにあーちゃんは同じ話を繰り返し話した。
(2)自分が今いる場所がわからなくなった。
「ここって○○駅の××デパートよね?」と、まるで違う場所を言い出した。
(3)バイバイをしたときに、駅構内で「わたし、どうやって帰ればいいの?」と途方に暮れてしまった。
何度も来たことのある駅で、行きは1人で来られたのに。
いや、こっちが途方に暮れるよね。
正直に言うと、その日よりもずっと前からあーちゃんに対して「?」と思うこともあったのに、何度も「疲れているのかな」とか「まさかね」とか、目を逸らしてしまっていた。
だけど、その日はさすがに目を逸らせないくらいにあーちゃんはおかしかった。
とはいえ親が認知症なのではないかと思ったとき、どうやって病院に連れて行けば良いのだろう。
あーちゃんは自分が若く見えることに絶対的な自信を持っていて、それはそれはプライドが高いのだ。