70代母の認知症「薬を出されたのに記憶なし!?」一人で通院できない母をどうしよう?/アルツフルデイズ

ワフウフ著『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』からエピソードを厳選してお届けします。

浮気と金銭問題が原因で、両親は家庭内別居中。そんな中、母(あーちゃん)はお金や薬の管理ができなくなり、アルツハイマー型認知症と診断されます。これ幸いと、あの手この手で母の個人財産の独り占めを企てる、悪魔のような父(たんたん)から母を守り、極秘で施設への入居を計画するワフウフさんと姉(なーにゃん)。いつかは訪れる肉親の介護問題をリアルに考えさせられたかと思うと、ありえないトラブルが続出し、グイグイと引き込まれる、涙と笑いの介護ストーリーをお届けします。

※本記事はワフウフ著の書籍『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』から一部抜粋・編集しました。

【前回】なぜ? 母に内緒で認知症検査をセットするも結果はグレー。でも薬は処方済み!?

糖尿病の病院では、認知症検査は説明済み。無論、母にその記憶はない。薬の服用で安心したのもつかの間、付き添い依頼の連絡が...。

真相がわかってめでたしめでたし......とはならなかった

2017年5月某日。

脳神経外科にて、すでにかかりつけの糖尿の病院で認知症の薬が処方されているという事実がわかった2日後、ワフウフとなーにゃんは月1回の検査と診察を受けるあーちゃんに付き添って糖尿病の専門病院へ行った。

あーちゃんは認知症の話をされることをなんとか阻止したい構えで、

「どうして一緒に来るの? わざわざ来てくれなくても私ひとりで大丈夫よ!」

と、険しい顔で何度も抵抗したが、

「薬のことは命に関わるから心配だもん、一緒に行って確認させて!」

と、「心配」という言葉を盾にしてなんとか強行突破したよ。

あーちゃんの担当の院長先生は、あーちゃんとはもう10年来のお付き合いだけど、お会いするのは初めてだった。

院長先生は突然現れたワフウフたちを見てちょっとびっくり。

「あーちゃんさんのお嬢さんたち? 今日はどうしました?」

毎月の検査結果を聞き、その後、まずは聞きやすいインスリン注射のことから聞いてみた。

最近数値が思わしくないので週1度の注射を勧めたが、本人が、「週1で病院に来るのは大変だから!」と断ってしまったらしい。←オイ!

単純に病院のミスだったようだ。

ようやく事実がわかったので、まずは薬で数値が治まらない状態なのだから、通うのが大変とか言っていないで身体のために週1のインスリン注射を受けなきゃ! と説得して、あーちゃんに了承させた(と言うか、本人には注射を断ったという認識も記憶もなかった......)。

その後、肝心要の認知症治療薬の話を。

あーちゃんに抵抗されると話がスムーズにいかないと思ったので、診察が終わった流れで挨拶しながらワフウフがあーちゃんを診察室の外へ連れ出し、なーにゃんは診察室に残ってそのまま院長先生とお話しするという形で実行することを事前に決めておいた。

診察室からあーちゃんを連れてワフウフが出て行った後、なーにゃんは、あーちゃんが脳神経外科で脳ドックと認知機能テストを受けた話をして、その結果認知症の薬を処方してもらおうとしたらすでにこちらで処方されていたのでびっくりして今日こちらに伺ったこと、今までの経緯を教えてほしいと院長先生に話した。

院長先生は、

*様子が気にかかったので認知症の検査をした。

*その結果、認知症治療薬を3月より処方した。

*もちろん、本人には説明した。

*その際、家族の連絡先を教えてもらおうとしたが、本人が頑として教えなかった。

と、教えてくれた。

あーちゃんがインスリン注射を断ったり、家族の連絡先を教えなかったりと色々失礼なことをしてしまっているのでなーにゃんが、

「母がご迷惑をおかけして申し訳ありません」

と言うと院長先生はさらりと「あーちゃんさんはお上品ですけど頑固ですもんね」とおっしゃった。

うん......そうなの。あーちゃんって慇懃(いんぎん)無礼なうえに頑固なの......。

あーちゃんは今までたくさん院長先生を手こずらせてしまったのかなあ。ごめんなさい。

その日は今後何かあった時に連絡がつくようになーにゃんの連絡先を病院に渡しておいた。

その頃、診察室の外では、「私抜きで何を話すの!?」と、食い下がるあーちゃんにワフウフは手こずっていたのだった......。

あーちゃんは自分がこの病院で認知機能テストを受けたことも、薬を処方されたことも覚えてないから、脳ドックの話をされたくなくて必死だったのだろうね。

院長先生はあーちゃんが認知症だと娘たちより早く気づいて薬の処方をしてくれていたのに、あーちゃんにはその記憶がないからねえ。

あーちゃんは本人がわかっていない(認めていない)にせよ、認知症の薬を飲み始めていた。

認知症に気づいてくれたのも、認知症の薬を出してくれているのも、糖尿病の病院だ。

10年以上通っているからスタッフさんとも顔見知りだから、いままで月に1度通院するだけだったのが週1度通院することになって、頻回に通院するからスタッフさんもあーちゃんを気にかけてくれるだろうし、しばらくはこれで様子見かなと、勝手に思っていた。

習い事のダンスのレッスンに週に2回通い、ときどきお友達と会ったりしながら、なんとかこれまで通りの生活を続けられるかなと思っていたのだ。

今までよりマメに連絡を取ったり会ったりして、注射はちゃんと通っているか、お薬はちゃんと飲めているか確認して、それで大丈夫だろうと。

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あーちゃんは明らかに認知症の症状が出ているけど、お薬を飲めば進行は抑えられるだろうと楽観視していたのかもしれない。

だけど、糖尿病の病院に話を聞きに行った数日後、あーちゃんがひとりで注射をしに行った日に看護師さんからなーにゃんのスマホに連絡が入り、

「もうおひとりでの通院は無理だと思います。どなたか付き添いをお願いします」

と、言われてしまった。

えーっ!? そんなにダメなの!?

ここから、週に1度のあーちゃんの通院付き添いが始まった。

 

ワフウフ 

アラフィフの主婦。昭和を引きずる夫、大学生の長男長女の四人家族。実母のアルツハイマー型認知症発覚をきっかけに、忘備録として2018年よりAmebaブログ「アルツフルデイズ」を開始。「介護日記」ジャンルで人気を博す。2019年一般の部でブログ・オブ・ザ・イヤー受賞。2020年に公式トップブロガーに認定される。実母の生活のフォローに姉とふたりで四苦八苦する毎日を、イラストと笑いと毒をほんのり混ぜながらブログに綴る。

※この記事は『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』(ワフウフ/フォレスト出版)からの抜粋です。
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