ワフウフ著『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』からエピソードを厳選してお届けします。
浮気と金銭問題が原因で、両親は家庭内別居中。そんな中、母(あーちゃん)はお金や薬の管理ができなくなり、アルツハイマー型認知症と診断されます。これ幸いと、あの手この手で母の個人財産の独り占めを企てる、悪魔のような父(たんたん)から母を守り、極秘で施設への入居を計画するワフウフさんと姉(なーにゃん)。いつかは訪れる肉親の介護問題をリアルに考えさせられたかと思うと、ありえないトラブルが続出し、グイグイと引き込まれる、涙と笑いの介護ストーリーをお届けします。
※本記事はワフウフ著の書籍『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』から一部抜粋・編集しました。
【前回】「やっぱり母は認知症なんだ」預金管理もままならず、整然としていた部屋は荒れ放題
預金の管理ができないから姉が通帳を預かっているのに「自分で管理したい!」と返却を声高に叫ぶ母。もう通帳の管理は無理だよ!
預かってもダメ、預からなくてもダメ
家探しの翌日、2017年7月27日。
病院で注射の日はなーにゃんが付き添ってくれた。
前日は遅くなりバタバタと実家を後にしたため、あーちゃんには口で説明しただけでA銀行とB銀行の通帳を持ち帰ったのだけど、あーちゃんはきっとそれを覚えていられないだろうからと、なーにゃんはあーちゃんに「A銀行とB 銀行の通帳はなーにゃんが預かっています」と書いたメモを渡した。
その1週間後の8月3日。病院で診察と注射の日。
「A銀行とB銀行の通帳がなくなったのよ」
と、あーちゃんが言い出した。
うわ~。メモも渡したのにやっぱり覚えていられないか。
なーにゃんが前の週に渡したメモも持ってない、覚えていないと言う。
そもそも預けたという記憶もないと言う。
通帳はなーにゃんが持っている、定期預金から普通預金に変えるため、と繰り返し説明したんだけど、やっぱり翌日に電話がかかってきた。
「A銀行とB銀行の通帳がなくなったのよ!」
しかも、今度は自分で持っているはずのC銀行の通帳までないと言う。
通帳を預からなくても預かっても、どっちにしてもダメじゃん......。
その後、あれだけ何度もなーにゃんがA銀行とB銀行の通帳を預かっていると説明したのに、あーちゃんのバッグには「再発行」という判が押されたB銀行の通帳が入っていた。
ワフウフたちの繰り返しの説明は記憶に残らず、通帳がないから再発行しなくちゃ、と思ってしまったらしい......。C銀行の通帳はまだ見つからず。
どう考えても自分で通帳を管理できる状態ではないのに、
「A銀行とB銀行の通帳、自分で持っていたいの!」と、言い出した。
この日はそれをうやむやにしたまま、再発行されたB銀行の通帳を預かって別れた。
8月31日。糖尿病の検査受診注射の日の朝、
「A銀行とB銀行の通帳を持って来て!」
と、なーにゃんに電話があった。
そういう事だけはしっかり覚えていて、「通帳持って来た? 返して!」と言うので、通帳を預かるまでの経緯を説明して、
「もう通帳の管理は無理だよ!」とハッキリ伝えた。
「趣味のダンスだけでもお金がかかるのよ! お金は自分で持っていたいわ!」
と険しい顔で食い下がられたが、部屋にまとまった額の現金があったことや、必要な時は預かった通帳からお金を下ろして渡せると説明して納得してもらった。......が、もちろんそれで終わらないのよ。