その後、桂場(松山ケンイチ)から、寅子の新潟赴任を決めた意図が明かされる。腹立たしいが君は有能だ、しかも君は俺たちに好かれてしまっている、後ろ盾がある、もう君は弱いものじゃない、と。通常のルートを経ずに一足飛びに有名になり、力も手に入れてしまった寅子の裁判官としての公平さを養うため、通常の修行をやり直す場を与えるという意図があったのだ。いつもは決して褒めない桂場が、すっかり天狗になっていた寅子が公私ともに自信喪失したとき、ここぞとばかりにデレてくれるのが心憎い。
そして、聡明で優しく、人格者の直明が、寅子たちが新潟に行ってしまうこと、寅子が今はもう自分に関心がなくて「寂しい」と、子どもの部分を見せてくれる嬉しさ。寅子がいなくなることを「寂しい」と素直に口にする多岐川(滝藤賢一)、そんな多岐川や桂場、ライアン(沢村一樹)に好かれる寅子を「羨ましい」と口にできるようになった小橋(名村辰)。見栄を張らずに、寂しい、羨ましいといった本音・弱音をさらけ出せる男性たちも、そういう人達が集まる職場も、なんだかカッコいい。
かくして、よね(土居志央梨)や轟(戸塚純貴)、梅子(平岩紙)、そして香淑(ハ・ヨンス)にもお別れを言った寅子は、優未と共に新潟に旅立つ。優未が依然としてスンッとしたままであるのは気がかりだが......。
文/田幸和歌子