フラれても平穏?禅僧が教えるレット・イット・ゴーな「心の免疫力」とは

「体の不調」や「老後の貯蓄」などの心配事は、誰もが抱えているはず。考えすぎて心の重荷を増やす、嫌なサイクルに陥ってしまっている人もいるかもしれません。そこで取り入れたいのが「禅の習慣」。今回は、google本社で禅の講義を行う話題の禅僧による、「心配を取り除くための"ちょっとした思考のクセや生活の習慣を変える方法"」について、連載形式でお届けします。

※この記事は『心配事がスッと消える禅の習慣』(松原正樹/アスコム)からの抜粋です。

フラれても平穏?禅僧が教えるレット・イット・ゴーな「心の免疫力」とは pixta_38528431_S.jpg前の記事「毎日のルーティンが新鮮に!禅僧が教える「赤ん坊の心」のススメ/禅の習慣(3)」はこちら。

 

■禅の習慣
「心の免疫力を鍛えて、誰にも振り回されない生き方をする」

「Let it go(レット・イット・ゴー)」。直訳すると、「もう気にしない」とか、「手放そう」というような意味ですが、映画『アナと雪の女王』の歌の歌詞で有名になったように、「ありのままで」と考えてもらっても問題はありません。

前にも書きましたが、感情に執着することが苦を生むので、日々、湧き上がる感情に対しては「レット・イット・ゴー」の姿勢がいちばんです。

禅の修行では「無になる」ことを教えていますが、修行道場に入った22歳の頃から今日まで、私は無になれたことはありません。今だからいえますが、修行中に坐(ざぜん)を組んでいたときは、もうすぐフラれそうな彼女とのやり取りをイメージトレーニングして、近く訪れるであろうその日に備えていました(失笑)。

後日、本当にフラれたのですが、イメトレの効果は絶大で、彼女に「なんでそんなに落ち着いているの?」と聞かれるほど、平穏な気持ちですごせました。

一緒に修行している仲間には、頭の中で碁(ご)の対局をしているという人もいましたし、とにかく人は、何も考えないでいることが無理なのだ、というのが私の気づきであり結論です。

人間が生きている以上、目に映るものを見て反応し、ふと心配が胸をよぎり、寝ているときでさえ脳は働き、夢も見ます。無の状態は、命尽きたとき。感情や思考が湧き上がってくるのを止めることはできません。

しかし、その感情や思考にとらわれないことが、心を安定に近い状態に保つためには必要です。そのための「レット・イット・ゴー」なのです。

感情や思考は、水を注いだときにできるあぶくのようなもの。姿を見せるのは一瞬で、本来であればすぐに消えてなくなります。それなのに、私たちはわざわざあぶくをすくい上げ、消えないようにあれやこれやと手を尽くしてしまうからややこしくなる。わざわざ、自分でややこしくしているのです。

「メールの返信がこないな。何か気に障(さわ)ることしたかな」。ここで、「でも、すぐに返信できないこともあるか」と考え、レット・イット・ゴーできれば心配事の種は芽生えません。もし続けて、「あの表現が悪かったのかな。ちょっと責めるような感じが出ちゃっていたかな」と考えても、「返信を待って、それで判断しよう」とレット・イット・ゴーできればいいのです。

最初は無理やりでも、習慣にしていくうちに、これが自分の思考のクセとして定着してきます。体の筋トレと一緒で、習慣化させるのが大事です。

筋トレを続けて少しずつ筋肉がついていくと同時に、それによって基礎代謝が上がれば免疫力が高まっていき、風邪をひきにくくなるなど、病気を遠ざけることができます。

これと同じで、レット・イット・ゴーを習慣化させることで「心の免疫力」も上げていくことができると私は考えます。何が起きても動じず、他人に振り回されない生き方をしている人は、「心の免疫力」が高い人、ともいえるでしょう。

心配や不安といったネガティブな感情にとらわれそうになっても、「心の免疫力」がついていれば、手放すことが容易になります。以前なら心配しすぎて何日も寝込んでいたけれど、心の免疫が上がっていくことで、一日寝れば回復し、それが瞬間的な発熱で済むようになり、そのうち自然と「レット・イット・ゴー」できるようになっている。そんなイメージです。

 

60歳、70歳になっても筋トレの効果はあるように、「心の免疫力」も年齢に関係なく、誰でも鍛えることができます。

湧き上がってくる感情はコントロールできなくとも、それをあっさり手放すという形でコントロールしていくことができるようになります。

レット・イット・ゴーの利点は一つの感情に執着しないことに加え、今ある感情を手放すことで、次の気づきや感情を受け入れる余白が生じることです。

一つの感情にとらわれて長く持ち続けることは、新しい自分と出会う機会を奪ってしまいます。
常に新鮮な自分であるために、あるがままに感情を受け止めて、どんどん手放していきましょう。

 

次の記事「禅僧が教える「心の床の間」を作る深呼吸の方法/禅の習慣(5)」はこちら。

 

 

松原正樹(まつばら・まさき)

1973年、東京都生まれ。千葉・富津市のマザー牧場に隣接する臨済宗妙心寺派佛母寺住職。アメリカのコーネル大学東アジア研究所研究員。ブラウン大学瞑想学研究員。ベストセラー『般若心経入門』の著者で名僧の松原泰道を祖父に持つ。コーネル大学でアジア研究学の修士号、宗教学博士号を取得後、カリフォルニア大学バークレー校仏教学研究所、スタンフォード大学HO仏教学研究所を経て、現在に至る。グーグル本社で禅や茶道の講義をするなど、マインドフルネス界からも注目を集めている。ニューヨーク在住。アメリカと日本を行き来しながら、禅とマインドフルネスの橋渡し的存在として、国籍や人種、宗教を問わず人々の「心の救済」にあたっている。

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『心配事がスッと消える禅の習慣』

(松原正樹/アスコム)

ニューヨークを拠点にスタンフォード大学、コーネル大学、グーグル本社などで禅的な生き方、心をラクにする瞑想法を指導している、いまもっとも注目すべき禅僧のデビュー作。不安・恐れ・孤独感・心の苦しみがスッと消える「禅的生活」のススメが、分かりやすく丁寧に語られた話題の一冊です!

この記事は書籍『心配事がスッと消える禅の習慣』からの抜粋です

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