60歳以降はメタボでもOK!? 「小太り体型」が長生きする研究結果に、「痩せたい願望」を見直す時

「細い=美しい」という決め付けから卒業しよう

「それでも私は痩せていたい」

「小太りなんて嫌だ。スリムになってきれいだと言われたい」

特に女性からは、こんな言葉が返ってきそうです。

今の世の中では、老いも若きも「痩せたい願望」のとりこです。

テレビでは四六時中、「○か月でマイナス○kg!」「ウエスト○cm減!」といった掛け声とともに、ダイエット食品やダイエット器具の購買を呼び掛ける宣伝番組が放送されています。それはとりもなおさず、視聴者の関心が高いからです。つまり、「スリムであること=美しい」という価値観が、深く根を下ろしているのです。

痩せることが「健康」ではないことは、もうおわかりでしょう。さらにもう一歩進めて、「美しい」に結び付けるのも、そろそろやめるべきです。

あくまで推測ですが、「痩せていたほうが美しい」という価値観を世に根付かせたのは女性に「弱くいてほしい」と思う、男性の策略かもしれません。

中国には昔、「纏足(てんそく)」という風習がありました。女性の足は小さいほうがいいという価値観のもと、女の子は子ども時代から足に布を固く巻いて、大きくならないようにしたのです。小さい足でおぼつかなげに歩く姿が、はかなげで魅力的=支配欲をそそる、と男性は考えたのかもしれません。逃げ出せないようにしたという説もあります。女性は細くあるべきという風潮にも、同じ価値観があるのではないでしょうか。「細い=美しい」という価値観で、女性の知力が十分働かないようにしているのかもしれません。

纏足は、とうに過去の遺物となり、現代人は足の小ささを美しさに結び付けたりはしません。未来の世では、痩せ願望は「遺物」になっていることを願うばかりです。

<POINT>
60歳以降のダイエットは栄養不足を招き、美容上も決してプラスにはならない。

 

和田秀樹
精神科医。1960年、大阪府生まれ。1985年に東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院、国立水戸病院、浴風会病院精神科、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現在、立命館大学生命科学部特任教授。映画監督としても活躍している。1987年のベストセラー『受験は要領』以降、精神医学・心理学・受験関連の著書多。近著に『老いの品格』『頭がいい人、悪い人の健康法』(ともにPHP新書)、『50歳からの「脳のトリセツ」』(PHPビジネス新書)、『60歳からはやりたい放題』『60歳からはやりたい放題[実践編]』(ともに扶桑社新書)などがある。

※本記事は和田秀樹著の書籍『60歳からは、「これ」しかやらない 老後不安がたちまち消える「我慢しない生き方」』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。
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