従業員を高圧的に攻撃し苦しめる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。コロナ禍を経てますます増加したカスハラから従業員を守るため、企業は早急な対策を求められています。犯罪心理学者の桐生正幸氏は、著書『カスハラの犯罪心理学』(集英社インターナショナル)で、豊富な調査実績をもとにカスハラが起こる理由とその対策を提案。いまや社会問題化しているカスハラの事例を通し、従業員や自身の心を守る方法、そして「客」としての自分自身を見つめなおしてみませんか。
※本記事は桐生正幸著の書籍『カスハラの犯罪心理学』(集英社インターナショナル)から一部抜粋・編集しました。
カスハラ被害の黙認は「ホワイトカラー犯罪」
黙認もまた罪である
カスハラは、客と従業員の間で起こる加害・被害でもあるが、同時に、従業員を守るべき企業(店)と従業員の間で起こる責任・権利の問題でもある。
日本では「ブラック企業」という言葉が2013年にユーキャン新語・流行語大賞を受賞し、悪質な労働環境や条件が社会的に問題視された。これに伴い、労働基準法の認知度も高まった。同法では、労働者の人権を守るための規定が記されている。従業員に働いてもらう雇用主や企業は、雇用や就業に関して、差別やハラスメントはもちろん、労働を強制してはいけないし、過重労働・時間外労働を抑制するためにマネジメントする義務がある。
同様に、接客対応をする従業員や顧客窓口の担当者たちが客からのカスハラ被害を受けた場合には、その従業員を守る必要があるはずだ。この意味で、カスハラを黙認する企業は「ホワイトカラー犯罪」を犯しているとも言える。