怒鳴る客にも共感を示し落ち着かせる。「被害意識」の強いカスハラ加害者へ取るべき具体的な対応

『カスハラの犯罪心理学』 (桐生正幸/集英社インターナショナル)第6回【全7回】

従業員を高圧的に攻撃し苦しめる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。コロナ禍を経てますます増加したカスハラから従業員を守るため、企業は早急な対策を求められています。犯罪心理学者の桐生正幸氏は、著書『カスハラの犯罪心理学』(集英社インターナショナル)で、豊富な調査実績をもとにカスハラが起こる理由とその対策を提案。いまや社会問題化しているカスハラの事例を通し、従業員や自身の心を守る方法、そして「客」としての自分自身を見つめなおしてみませんか。

※本記事は桐生正幸著の書籍『カスハラの犯罪心理学』(集英社インターナショナル)から一部抜粋・編集しました。

従業員を守り、消費者を育てる

怒鳴る客にも共感を示し落ち着かせる。「被害意識」の強いカスハラ加害者へ取るべき具体的な対応 07_kasuhara_eye.jpg
※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

エッセンシャルワーカーを支える

カスハラ被害を受けるのは、最前線で接客などをする「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる人たちだ。

エッセンシャル(essential)とは「必要不可欠な」という意味を表す英単語で、エッセンシャルワーカーは「必要不可欠な仕事に従事する労働者」を示す言葉だ。病気や介護のほか、衣食住など生きていくために必要なものやサービスは多くある。コンビニやスーパー、そうした店で売られる商品を運ぶ運送業、医療や介護、さまざまな場面で私たちの生活を支える「必要不可欠な仕事」をしている人たちがいる。コロナ禍の緊急事態宣言下でも、通勤して職場で働かねばならない職種の人たちが注目されたことで、この言葉は日本でも広く知られるようになった。

そんな従業員たちは、真っ先にカスハラと直面する人たちでもある。土下座事件でも見られるように、マニュアル対応だけでは被害は拡大してしまう。カスハラ加害者のタイプを知り、具体的な対応をとる必要がある。ここでは数例を挙げよう。

 

桐生正幸

東洋大学社会学部長、社会心理学科教授。山形県生まれ。文教大学人間科学部人間科学科心理学専修。博士(学術) 。山形県警察の科学捜査研究所 (科捜研)で犯罪者プロファイリングに携わる。その後、関西国際大学教授、同大防犯・防災研究所長を経て、現職。日本犯罪心理学会常任理事。日本心理学会代議員。日本カスタマーハラスメント対応協会理事。著書に『悪いヤツらは何を考えているのか ゼロからわかる犯罪心理学入門』(SBビジュアル新書)など。

※本記事は桐生正幸著の書籍『カスハラの犯罪心理学』(集英社インターナショナル)から一部抜粋・編集しました。
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