部屋を整理整頓するために、ネットや雑誌で知った「収納用品」をたくさん買ってきて意気揚々!やる気に満ちて片付けをし始めたのに、終わってみたら結局レイアウトが変わっただけ、なんて経験ありませんか?
本書『モノを元に戻す技術』では、ベストセラーとなった『シンプルに生きる』の著者であるフランス人作家が、実際に日々行っている「片付け術」を惜しみなく紹介。「どうしたらスッキリ片付いた毎日を送れるのか?」迷える子羊を救う、片付け術の全てを伝授します!
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整理整頓とは、他人を尊重し、自分を尊重すること
日常生活においてもっとも取るに足らない行為におけるまで、
常にあなたの神をたたえようと努めなさい。
掃くことや入浴すること、料理をすることも、
あなたの神――それはあなた自身であるかもしれない!――に
敬意と献身を表す機会なのです。
津田逸夫 『Le dialogue du silence(沈黙の対話)』(未邦訳)
私のまわりの何人かの人たちに、できるだけ失礼のないように、「どうしてあなたの家は散らかっているの」と尋ねたとき、彼らは片づけることが大嫌いだと声高に答えました。乱雑な部屋の中で常にいくつものことを同時にして、すぐに集中力がなくなることがよくあることを自覚していると正直に認める人もいましたし、自分がしたくないことをほかの人に頼っていると認める人もいました。そのうちの一人がこう言いました。「片づけは妻の仕事だ。彼女は片づけが好きなんだ」と。「それは違うわ」と言い返したくなりました!
ほかの人があなたより片づけが好きなわけではありません。ただ、あなたより散らかっていることに慣れていないし、被害を被っていることに耐えられないだけなのです。
家族のことを真剣に考えると、一人で暮らしているわけではないのに自分のまわりを散らかすことは、家族に対する敬意が欠けているということだと理解できるでしょう。片づけることで、家庭に平安がもたらされるだけでなく、他人も自分も尊重できるようになるのです。
片づけと個性の問題
転換は完全に吸収されたときにのみ起こる。(中略)
この作用法は、私たち自身の精神的介入によって、いつものように、
もうふさがっていないエネルギーの大きな流れを即座に解放する。
すると、私たちはよりうれしくなり、
言葉の両方の意味において軽くなるのだ。
ヴィッキ・マッケンジー 『Un ermitage dans la neige(雪の中の修道院)』(未邦訳)
片づけについて話をしていた友人は、つい最近会議があって、同僚と一緒にホテルに泊まったのだと話してくれました。その同僚は魅力的で聡明だけど、かなりだらしがないそうです。
「彼女はモノをどこにでも置くのよ。部屋の真ん中で靴を脱いだら、脱いだ場所に置きっぱなしなの。コーヒーを飲んで、そのあいだにバッグから取りだしたい書類のことを思いついたら、半分飲んだだけのカップを飲んでいたところにそのまま置いて、その後放ったらかしにするの。歯を磨いたら、歯磨き粉のチューブのふたを閉めない。バッグの中のものを使ったら、元には戻さないでどこにでも置く。ほかのものもそんな感じよ」と彼女は私に言ったのです。
この整理能力のなさは当然、私の友人をいらだたせました。彼女はこう付け加えました。「朝起きたとき、私は当たり前のようにベッドの上で毛布をたたむの。そうすると部屋があまり散らかって見えないし、一日の準備がより楽にできるからよ。でも同僚はホテルの部屋でベッドをそのままにしたの。彼女にとっては、機械的な動作じゃないのよ。私にとっては勝手に身体が動くことなんだけどね!」
なぜ当たり前のように「きちんとした」人もいれば、どうしても「だらしない」人もいるのでしょう?
デスクの上が不要な書類でいっぱいでないと集中できない人もいれば、反対に、何に取りかかるにも自分のまわりをすっきりさせる必要のある人もいます。また、雑然とした中に暮らしていても、自分の持ちものがどこにあるかきっちりとわかっている人もいます。それは個性の問題でしょうか?
教育の問題でしょうか?
私の義姉は、かなり几帳面です。どこかに着くとすぐに、彼女は自分のバッグを置く場所を決めます。そして、帰るときまで彼女のバッグはその場所にあるのです。彼女のお父さんは非常に厳しい方だったようです。
たしかに一般化することはできません。片づけは自己の表現であり、意志を明確にすることであり、モノとの個人的なかかわりでもあるからです。けれども、だらしない人の大半はそのイメージどおり、あまり整理整頓されていない暮らしをしていることが多いのです。そうした人たちは、自分の時間をきちんと整えること、つまり、そのときの優先順位によって決断を下すことができません。
私の友人のアキコさんは、3日間の出張で3セットの衣装を準備していました。すなわち、パンツが3本、ブラウスが3枚です。「全部で3セットよ」と彼女は言いました。しかし中には、何を着るかよく考えず、洋服だんすの半分ほどを空けてスーツケースに詰めこんできた人もいたそうです。
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