大切なのは死にゆく人に最期まで寄り添うこと
人には、それぞれの使命や役割があります。
医師や看護師の人たちには、病気で苦しむ患者さんを救うという使命があります。
しかし同時に、救えない命があることに向き合わなければいけないときがあります。
医学や医療の限界という現実に直面せざるをえないときです。
そんななかで、医学の進歩のため、一人でも多くの人の命を救うために日々、たくさんの医師や看護師の方々が医療に取り組んでいます。
遠藤周作さんには、小説を通して多くの人々に救いや癒しを伝えるという使命がありました。
しかし、一人の命も救えないという無力感を味わいました。
それでも、自分ができること、自分だからできることとして、「心あたたかな医療」の活動を進められました。
病気で苦しみ、死に向かっていく家族を目の前にして、多くの人が「痛みを取ってあげることも、命を救うこともできない。自分には何もしてあげることができない」と思い、自分を責めてしまうことがあるかもしれません。
また、他の家族があなたを責めることがあるかもしれません。
たしかに、体の痛みは薬が抑えてくれます。
しかし、心の痛みや苦しみ、怖れや孤独感を癒し、死にゆく人の心を救うことができるのは、身近で見守り続けるあなたです。
ですから、どうか無力感に苛まれたり、自分を責めたり、家族同士が分裂することなどなく、死にゆく人が幸せな死を迎えるために、最期まで愛をもって寄り添っていただきたいと思います。
【最初から読む】「私が死んでも悲しまないで・・・」死にゆく教え子への祈り
死を受け入れる「聖なるあきらめ」、大切にしたい「仲良し時間」、幸せな看取りのための「死へのプロセス」など、カトリックのシスターが教える死の向き合い方