突然、胸のドキドキして息切れや、めまい、倦怠感を感じたことはありませんか? 心房細動という不整脈が原因かもしれません。ストレスや、年のせいだろう...と放置していると、重大な症状を引き起こす場合も。そこで今回は、慶應義塾大学医学部 循環器内科准教授の高月誠司(たかつき・せいじ)先生に、心房細動の予防や治療について教えていただきました。
健診で見逃されることも
毎日の検脈で予防を
心房細動には、発作性心房細動と持続性心房細動の2種類があります。
発作性心房細動は症状が一過性のため、健康診断の心電図検査で異常が見られないことがあるのです。
自覚症状がなく心電図検査をすり抜けると、心房細動を放置することにつながります。
「近年の疫学研究で、心房細動は認知症のリスクを上げると報告されています。心不全や脳梗塞に至らなくても、認知症になる恐れもあるのです。それを防ぐには、血圧のように毎日脈を測る『検脈』も習慣化しましょう」と高月先生。
血圧測定器には、脈拍も同時に測定できる機器が多いので、毎日朝晩、血圧を測るときなどに脈もチェックを。
自分で脈を測定しメモをしておくと、異常な脈に気付きやすくなります。
心臓が急にドキドキするようなときも、脈を測りましょう。
「検脈」の習慣をつけよう
①人さし指、中指、薬指の3本を手首にあてます。
②ドッ、ドッと脈を感じるまで徐々に強く押さえていきます。脈は強過ぎても弱過ぎても感じられません。強弱をつけながら探し、見つからない場合は少し場所を変えてみましょう。
③脈が見つかったら15秒に何回打っているかを数えて、それを4倍します。正常な場合は1分間に50~100回です。
心房細動の2つのタイプ
<発作性心房細動>
・短時間だけ起こってすぐ元に戻る
・ドキドキするなど自覚症状を伴うことが多い
・心電図などの短時間の検査では見つからない場合がある
<持続性心房細動>
・1週間以上続く
・自覚症状がないこともある
・血圧を測定すると脈拍が不規則である
発作性心房細動は動悸などの自覚症状を感じやすいのですが、持続性心房細動は症状が慢性的で無症状の場合が多いそうです。
「心房細動の治療法は、薬療法と、血管から細い管のカテーテルを挿入し、乱れた電気信号を治すカテーテルアブレーションがあります。日本不整脈心電学会のホームページでは、一般の方々に分かりやすい動画を公開していますので、参考にしていただければと思います」と高月先生は話します。
心房細動は加齢に伴い発症リスクが上がりますが、生活習慣病や肥満、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能亢進症(※)といった病気でも起こります。
また、仕事のストレスや暴飲暴食、寝不足なども、発症の引き金になるそうです。
「コロナ禍で食生活が乱れた人は注意が必要です。お酒の飲み過ぎは発作の引き金になります。『たかだか1杯多いだけの量』でも、積み重なると心房細動のリスクは増大します。また、運動不足もよくありません。生活習慣を見直しましょう」と高月先生はアドバイスします。
食生活を見直して規則正しい生活を維持することは、心房細動予防に加え、生活習慣病の改善や予防にもつながります。
一石二鳥になるように、今日から取り組みましょう!
※バセドウ病などがあります。