女性に症状が出やすい「息苦しさ」や「倦怠感」は年のせい? その心房細動は脳梗塞の前触れかも...

突然、胸のドキドキして息切れや、めまい、倦怠感を感じたことはありませんか? 心房細動という不整脈が原因かもしれません。ストレスや、年のせいだろう...と放置していると、重大な症状を引き起こす場合も。そこで今回は、慶應義塾大学医学部 循環器内科准教授の高月誠司(たかつき・せいじ)先生に、「突然の胸のドキドキや息苦しさの原因」について教えていただきました。

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突然の胸のドキドキ 症状を見逃さないように

普段、特別なことをしたわけでもないのに、急に心臓がドキドキして息苦しさを感じてしまう...このような症状は、加齢や運動不足、ストレスでも起こりますが、心房細動という不整脈でも生じるので注意が必要です。

「心房細動は、動悸、息切れ、めまい、倦怠感といった自覚症状が特徴です。女性の患者さんの方が、男性よりも症状を強く感じる人が多い。早期発見・早期治療のためにも、症状を見逃さないようにしましょう」と高月誠司先生。


心房細動とは?
「不整脈」の一種で、心臓の心房内に流れる電気信号の乱れによって起きる。心房がけいれんしたように細かく震え、血液をうまく全身に送り出せなくなる。

もしかして私も心房細動?セルフチェック

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チェックが多い人は、何らかの異常があるかもしれません。早めに循環器内科、不整脈専門医などに相談しましょう。


ご存じですか? 心臓のこと
心臓には、左心室・右心室・左心房・右心房の4つの部屋があります。それぞれの部屋は筋肉でできていて、電気信号により規則正しく収縮しています。

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心臓が動く仕組み
右心房の上側(上大静脈の付け根)に洞結節と呼ばれる組織があり、その部分で1分間に60~70回といった規則正しい心拍のリズムを作っています。洞結節で作られたリズムは、一旦、心房を収縮させた後に、房室結節を介して心室に伝わり、心室が収縮します。

なぜ心房細動が起きてしまうの?
洞結節以外の場所から発生する異常な電気信号により、心房内をめぐる電気信号が乱れ、心房が細かく激しく震えるように動く状態になってしまいます。

女性に症状が出やすい「息苦しさ」や「倦怠感」は年のせい? その心房細動は脳梗塞の前触れかも... 2103_P087_02.jpg洞結節の規則正しい電気信号とは別に、乱れた電気信号が速く流れることで心房細動になります。乱れた電気信号は肺静脈付近から起こり、ランダムで不規則です。あまりに速い信号なので、心房のポンプ機能が低下して血流が停滞し、結果として心不全や脳梗塞につながります。

《心房細動が引き起こす2つの重大な症状》

心不全
心房下部の心室にも悪影響が及び、心臓の働きが著しく低下すると心不全になります。

脳梗塞
心房細動で心臓内に生じた血栓が、脳へ流れて血管を詰まらせることで脳梗塞に。


心臓は、上部左右の心房と下部左右の心室から成り立ち、一定リズムの電気信号によって1分間に60~70回拍動しています。

心房細動になると、乱れた電気信号によって心房が400回から600回も震え、心房のポンプ機能が低下してしまうのです。

そのため、動悸や息切れ、めまい、倦怠感といった症状につながります。

ただし、心房細動の人の全てに症状が出るわけではありません。

「国内で心房細動の患者さんは約120万人と推計され、男女の比率はおよそ半々です。女性の約7割は症状が出ますが、男性は約半数にすぎません。無症状のまま放置してしまう方が少なくないのです」と高月先生。

心房細動で心房のポンプ機能が低下し血流が悪くなると、心室にも悪影響を及ぼします。

それが長く続くことで、心臓の機能が著しく低下した状態、すなわち「心不全」につながります。

また、心房で血液が停滞することで血栓も生じやすくなり、この血栓が血流に乗って脳へ到達し、血管で詰まれば脳梗塞になります。

「心房細動の血栓で発症する脳梗塞を『心原性脳塞栓症』といいます。血管に生じた血栓で起こる脳梗塞よりも重症化しやすく、命に関わることも珍しくありません。高齢になればなるほど心原性脳塞栓症のリスクが上がるので、心房細動を放置しないようにしましょう」と高月先生。

心房細動は心臓にダメージを与え、脳にも大きな影響を及ぼすことがあるのです。

心臓がドキドキするような症状を見逃さず、異変を感じたらかかりつけ医や近所の循環器内科医のいるクリニックを受診するようにしましょう。

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取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

<教えてくれた人>
慶應義塾大学医学部 循環器内科准教授
高月誠司(たかつき・せいじ)先生
専門は心臓病、特に不整脈診療。カテーテルアブレーションなど非薬物治療のエキスパート。日本不整脈心電学会の情報広報委員会委員長で疾患啓発の広報活動にも注力。

この記事は『毎日が発見』2021年3月号に掲載の情報です。

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