「ガンコで融通がきかない! 」「思い込みが激しすぎる! 」...高齢になってきた親の行動に、毎日イライラしていませんか? 実は、それらの行動には理由があるのです。人気ブロガー、なとみみわさんの母と姑の"理解できない"行動を、大阪大学大学院教授の佐藤眞一先生が老年行動学で解明。理由が分かれば、あなたの親の行動も納得できるかも!
※この記事は『まいにちが、あっけらかん。―高齢になった母の気持ちと行動が納得できる心得帖』(なとみみわ 佐藤眞一/つちや書店)からの抜粋です。
前のエピソード:まだじゃがいも煮えてないのに...自分の間違いを認めない/高齢母の行動がわからない!(7)
高齢者の思考は「自分に有益になるほうへ考える」ようにできています。
たとえば、体力がなくなる、足や腰が痛むといった身体的な老化によって起こる不調を、高齢者は「認めたくない」と思っています。そこで、脳が自分に有益になるように、本当は認めなければいけない嫌な事実は「認めない(記憶しない)」ように働き、気持ちを切り替えさせているのです。
これは高齢者がこれまでの人生経験から、嫌な(認めたくない)経験に気持ちを引きずられ苦しい思いをしているよりも、そういった経験は早く忘れてしまったほうが生きやすいということを知っているからです。
ある実験で、若者と高齢者に怖い写真と楽しい写真を見せたところ、「若者は怖い写真」を見る時間が長く、「高齢者は楽しい写真」を見る時間のほうが長かったという結果が出ています。これは高齢者が不快な感情よりも、楽しい感情に長く触れているほうが人生を豊かにできることを、自分の経験から知っているためです。
お姑さんの行動を見てみると、しっかり身支度を整えて、お迎えを待つほど楽しみにしていたデイサービスの日ではなかったことに、本当はがっかりして、とても残念な気持ちになったのだろうと思いますが、その勘違いをすぐに忘れ、気持ちをほかに切り替えられています。この気持ちの切り替えがうまくできず、落ち込んだ感情を長く引きずったままでいると抑うつ状態になってしまい、体調を崩してしまう場合もあります。
若い頃の思い出は、美化されて記憶に残りがちです。これは脳が嫌な記憶は削除して、「よい思い出だった」と思えるように働きかけているためです。高齢者は「都合の悪いことをなかったこと」にしているわけではなく、いつまでも嫌な感情(自分に都合の悪い感情)に引きずられているよりも、すぐに忘れて気持ちを切り替え、楽しいこと、やらなければいけない事に目を向けて、人生をもっと有益に過ごすべきと脳が処理をしているだけなのです。