「ガンコで融通がきかない! 」「思い込みが激しすぎる! 」...高齢になってきた親の行動に、毎日イライラしていませんか? 実は、それらの行動には理由があるのです。人気ブロガー、なとみみわさんの母と姑の"理解できない"行動を、大阪大学大学院教授の佐藤眞一先生が老年行動学で解明。理由が分かれば、あなたの親の行動も納得できるかも!
※この記事は『まいにちが、あっけらかん。―高齢になった母の気持ちと行動が納得できる心得帖』(なとみみわ 佐藤眞一/つちや書店)からの抜粋です。
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自分で決めたことに固執する、人の意見を聞かない、自分の考えを優先するなどの頑固に見える行為は、思い込みをなかなか変えられない「認知の硬さ」が原因です。
高齢になると、脳の老化によって自分で最初に思い込んでしまったことを変えることや、やり始めたことを途中で変更することが難しくなります。そのため、お姑さんのように「お迎えまで、あと1時間ぐらいあるよ」となとみさんからアドバイスされても、はじめに自分で決めた「予定に間に合うように早めに行動したい」という考えを柔軟に変更することができなくなっているのです。
また、お姑さんは、「今日はデイサービスに行く日」と理解しているので、予定の時間に間に合うように準備を進めて家を出るために早めに行動したいと考えています。それは、目的を忘れてしまうことへの不安から、早めの行動で目的を遂行したほうが安心だと考えているためです。
さらに、高齢者は常に記憶と身体能力の衰えを感じており、これ以上「人に迷惑をかけられない」という気持ちが強くなっています。
ですから、お姑さんは「遅れたらデイサービスの人に迷惑をかけてしまう」との思いが強く、遅刻するよりはたとえまだ早くても、その場所に行って待っていようと考えたのでしょう。それが自分自身でもっとも安心できる行動なので、約束の時間まで長く待ち続けることについては、特に気にしていません。
親切心からアドバイスしても、それを聞き入れようとしない高齢者の行動は、理解できない「頑固」な行動のように見えますが、その根底には、まわりの人への思いやりと優しい心遣いがあるのです。
高齢者が集うイベントでは、開演の数時間前から会場にやって来て待っている人が多くいます。この場合も、遅れると「たくさんの人に迷惑をかけてしまうかもしれない」という不安感からの早めの行動と、早く会場に着いて安心したいという2つの気持ちが働いているのです。
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