「あたしは言ってない!」最近言った言わないが多すぎます/高齢母の行動がわからない!

「ガンコで融通がきかない! 」「思い込みが激しすぎる! 」...高齢になってきた親の行動に、毎日イライラしていませんか? 実は、それらの行動には理由があるのです。人気ブロガー、なとみみわさんの母と姑の"理解できない"行動を、大阪大学大学院教授の佐藤眞一先生が老年行動学で解明。理由が分かれば、あなたの親の行動も納得できるかも!

※この記事は『まいにちが、あっけらかん。―高齢になった母の気持ちと行動が納得できる心得帖』(なとみみわ 佐藤眞一/つちや書店)からの抜粋です。

前のエピソード:「あの人たちは夫婦よ!」思い込みが激しすぎて全く聞き入れない/高齢母の行動がわからない!(3)

 

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言った言わないが多くなるのは、高齢者の脳の記憶の仕組みに問題が生じていることが原因です。

脳は記憶に必要な体験や知識を目、耳などの感覚器官から取り込み、前頭葉(情報整理を行う部位)がその情報を判別して、自分の気になった体験や知識だけを海馬(かいば-短期的に記憶を保存する部位)に送ります。その海馬で短期記憶として一時的に保存されるのですが、しばらくすると大部分は失われていきます。ただし、繰り返し思い出している記憶や、ほかの物事と結びつけられた印象の強い記憶は、大脳皮質で長期記憶として別に保存されます。

高齢者は老化によって目や耳の機能が衰えているので、そもそも脳に入ってくる情報量が少なくなっています。また、脳の老化によって、短期記憶を長期記憶に移行する能力も落ちています。そのため、若い頃よりも少なくなった脳の能力だけを使っている高齢者は、自分にとって必要と思われる記憶の保持だけを行います。つまり、高齢者は都合の悪い記憶だけを忘れてしまうのではなく、「覚えられない」、もしくは「覚えていても思い出さない」ような脳の仕組みになっているのです。

このことから、お姑さんにとって病院の予約はさほど重要ではなかったということが読み取れます。「自分で予約すると言った」のが事実だったとしても、覚えておかなくてはいけないほど重要な情報ではないと脳が勝手に判断したため、忘れてしまったのでしょう。

近い将来に関する記憶を「展望的記憶」と呼びますが、これには、「忘れてもそれほど支障なし」と無意識に思っていることほど忘れやすく、「忘れたら大変なことになる」情報ほど忘れないという特徴があります。

さまざまな社会的責任を背負ってきた高齢者にとって「忘れたら大変なことになる」情報は、これまでたくさんあったことでしょう。そのような長い人生経験から高齢者の展望的記憶は若い人よりも高くなっていますので、自分で「覚えておきたい」と思った情報であれば、忘れることはありません。

 

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なとみみわ

テレビ制作会社に勤務。子育ても終わり趣味であるマンガを描きつつイラストレーターに転身。Web、雑誌、書籍、ムック、広告等を中心に活躍

 

佐藤眞一

大阪大学大学院人間科学研究科臨床死生学・老年行動学研究分野教授、放送大学客員教授。博士(医学)。前日本老年行動科学会会長、日本老年社会科学会理事、日本応用老年学会理事、日本老年精神医学会編集参与、大阪府社会福祉事業団顧問などを務める。


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『まいにちが、あっけらかん。―高齢になった母の気持ちと行動が納得できる心得帖』

(なとみみわ 佐藤眞一/つちや書店)

介護ブログで人気のなとみみわさんが、義母のばあさんと実母のよしみとの過去に「イライラした体験」や「あっけらかんとした体験」を思い出しながら、ほぼ実体験をマンガ化。高齢になってきた親の理解できない行動を老年行動学で解明します。

この記事は『まいにちが、あっけらかん。―高齢になった母の気持ちと行動が納得できる心得帖』からの抜粋です
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