「ガンコで融通がきかない! 」「思い込みが激しすぎる! 」...高齢になってきた親の行動に、毎日イライラしていませんか? 実は、それらの行動には理由があるのです。人気ブロガー、なとみみわさんの母と姑の"理解できない"行動を、大阪大学大学院教授の佐藤眞一先生が老年行動学で解明。理由が分かれば、あなたの親の行動も納得できるかも!
※この記事は『まいにちが、あっけらかん。―高齢になった母の気持ちと行動が納得できる心得帖』(なとみみわ 佐藤眞一/つちや書店)からの抜粋です。
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高齢者は「自分は人の役に立っている価値ある人間である」という思い(自尊心)を強く持っています。
老化によって脳や体の機能が衰えると、「以前できていたことができなくなる」「ちょっとしたミスが増える」など、自分ではなかなか受け入れにくい事実に直面して落ち込む機会が増えてしまいます。そんなときに、「自分には価値がある」と思う自尊心で、否定したい事実をカバーしているのです。
この感情を支えているのは「自分はまだ人の役に立てる」という誇りです。この強い思いによって、自尊心を保とうとしているので、まわりからはプライドが高いように見えてしまう場合があります。
お姑さんの場合、自分が作る料理はおいしいという自信があるので、肉じゃがを作って家族に喜んでもらえれば、「役に立っていると認めてもらえる」と考えています。それなのに、料理の手順を間違い、指摘されたことを受け入れてしまうと、「役に立たない自分」になってしまうと考え、間違いを認められなかったのでしょう。
このように間違いを認められない高齢者は多く見受けられます。特に75歳以上の後期高齢者には「自分は人の役に立つ人間ではなく、世話をされる人間になった」と考える人が多くなる傾向があり、高齢者は常に「自信のある自分」と「自信のない自分」の間を揺れ動きながら生活をしていると考えられます。
高齢者にとって自尊心はとても大切で、自信をなくしてしまうとさまざまなやる気を失ってしまう可能性があります。ですから、「自分は人の役に立っている価値ある人間だ」と思いながら自尊心を高く保ち続けることはとても重要なことなのです。
また、「自分は役に立っている」と感じているほうが精神面の安定を導き、老化によるストレスを軽減させます。これは実際に役に立てているかどうかではなく、本人がどう思っているかが大切ですので、まわりの人は高齢者の自尊心と揺れ動く感情を理解して、一方的に頭ごなしに否定することはせずに付き合うようにしましょう。
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