周囲に要介護者(介護を受ける人)がいないと、介護は自分に関係ないと思いがちです。が、介護者(介護をする人)になる日は突然やってきます。その時に知識がないとどうすべきか分からず、精神的に追いつめられることに。そうならないために知っておくべきことを、介護者のサポートをしている阿久津美栄子さんに、伺いました。
まずは、介護が始まる原因・きっかけにはどのようなものがあるのでしょう。
要介護になるのにはさまざまなケースがあります
要介護になる原因で多いのは認知症や脳血管疾患です。発症は、病気やけがなどの他、コミュニティ活動の場を失うといった環境の変化による場合もあります。認知症は同居人がいるか否かで発覚する時期も異なります。以下が、実際に介護が必要になった時の状況です。人によりさまざまなケースがあり、そして、誰にでも起こりうるのです。だからこそ、介護のことを事前に知っておくことが大切なのです。
【遠距離介護の場合】
▼実母介護Aさん(発症時:娘・主婦60代)
▼要介護者=実母(発症時80代)
実家に帰省の際、「財布がない」、「切符がない」と言っては探すということが増えたため、物忘れ外来へ。年に数回しか会わないため、気づくのが遅れたことが悔やまれます。
【同居での介護の場合】
▼配偶者介護Bさん(発症時:夫・年金生活60代)
▼要介護者=妻(発症時60代)
妻が事故に遭い、その後、専門職から妻の話し方に問題があると指摘された。当時は認知症専門病院がなく、病院探しが大変だった。介護経験者に相談すべきだったと思う。
【同居での介護の場合】
▼姑介護Cさん(発症時:嫁・主婦30代)
▼要介護者=姑(発症時60代)
1人暮らしで脳梗塞になる。退院後は家族と同居したが被害妄想が強くなり、介護者とのトラブルが絶えなかった。その後、介護老人保健施設に入居し、トラブルも収まった。
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阿久津美栄子(あくつ・みえこ)さん
1967年生まれ。NPO法人UPTREE代表(http://uptreex2.com/)。NPO法人介護者サポートネットワークセンターアラジン理事。子育て中に両親の遠距離介護を経験し、介護者の居場所を作る活動を行う。2016年、母子健康手帳の介護版ともいえる「介護者手帳」を制作。