坐骨神経痛とは、腰から足にかけて延びている坐骨神経が、さまざまな原因によって圧迫されたり、刺激されたりすることであらわれる、痛みやしびれなどの症状を指します。
坐骨神経痛の原因となる病気はいくつかあり、また、症状がよく似ていても坐骨神経痛ではない場合もあります。そこで、平和病院副院長で横浜脊椎脊髄病センター長の田村睦弘先生に症状の見極め方や治療方法、痛みを改善するセルフケアのやり方などを教えていただきました。
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入浴は簡単にできるセルフケア。足がつりやすい人は注意が必要です
坐骨神経痛で長い間、悩んでいるという人は多いですが、その実態は意外と知られていません。そこで、日常生活で気になる点を田村先生に教えていただきました。
Q1:お風呂に入るのは坐骨神経痛に良いですか?
A:坐骨神経痛の治療の一つに、腰を温める温熱療法があります。温めることで腰の血行が良くなると、痛みの原因となる物質や疲労物質の排出が促されて痛みがやわらぐのです。その温熱療法を自宅で手軽にできるのが入浴。40度前後のややぬるめの湯につかるのがおすすめです。湯舟の中では「仙骨を浴槽の縁につけて安定させる」「椎間板ヘルニアの人は、背中をなるべくまっすぐにする」「ひざを曲げる」など、姿勢に気を付けましょう。お風呂上がりにストレッチを行うと、さらに効果的です。
Q2:運動した方がいいと聞きますが、やらない方がいい運動はありますか?
A:坐骨神経痛の原因となっている病気によって、効果的な運動は異なります。また、やらない方がいい姿勢や運動もあります。腰部脊柱管狭窄症や腰椎変性すべり症の場合、腰を反らしたりひねったりする運動は、おすすめできません。また、腰椎椎間板ヘルニアの場合は、腰をゆっくり反らせる運動が有効ですが、腰を前屈させる動作や運動は避けた方がいいです。
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Q3:お酒が好きなのですが、坐骨神経痛の改善のためには飲まない方が良いでしょうか?
A:アルコールの摂り過ぎは、坐骨神経痛にも大きく影響します。飲酒したときに発生するアセトアルデヒドは、神経を刺激する特徴を持っており、神経痛が起こることがあるからです。お酒は、適量ならば血行を良くしてくれますが、飲み過ぎると血管が収縮して、反対に血行不良を起こし、痛みの原因となります。特に肥満の人は、少量のアルコール摂取でも痛みが出ることがあります。休肝日をつくるなど、飲酒量をコントロールすることも坐骨神経痛の予防や改善になります。
Q4:外出先で脚がしびれてきたら、どう対処したらよいでしょう?
A:歩いているときにしびれや痛みが出てきた場合は、ひとまず座りましょう。そして、痛みが治まったらまた動くようにします。腰部脊柱管狭窄症の人は、体を前にかがめると症状が改善されることが多いです。
Q5:脚がよくつります。坐骨神経痛でしょうか?
A:脚がつるのは、一般的には「こむらがえり」といって筋肉が急速に収縮することで起こります。「こむらがえり」が起こるのは、筋肉疲労や脱水による筋肉の異常興奮、カリウム不足、つりやすい体質などさまざまな原因があります。そして、坐骨神経痛の症状でもこむらがえりはみられます。特に、腰部脊柱管狭窄症の人は、脚のつりを訴えることが多く、治療薬や手術などによって症状が治まることも少なくありません。気になる場合は、一度、整形外科や脊椎専門外来を受診してください。
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取材・文/笑(寳田真由美)