女性に多い「腰椎変性すべり症」「いつのまにか骨折」も坐骨神経痛の一種/坐骨神経痛

坐骨神経痛とは、腰から足にかけて延びている坐骨神経が、さまざまな原因によって圧迫されたり、刺激されたりすることであらわれる、痛みやしびれなどの症状を指します。
坐骨神経痛の原因となる病気はいくつかあり、また、症状がよく似ていても坐骨神経痛ではない場合もあります。そこで、平和病院副院長で横浜脊椎脊髄病センター長の田村睦弘先生に症状の見極め方や治療方法、痛みを改善するセルフケアのやり方などを教えていただきました。

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閉経前後に注意したい「腰椎変性すべり症」

坐骨神経痛とは、「いつもお尻や脚に痛みやしびれがある」「腰を動かすと脚の痛みが強くなる」「安静にしていてもお尻や脚がとても痛くなる」「歩くと脚が痛くなって歩けなくなり、休むとまた歩けるようになることを繰り返す」などの症状の総称で、病名ではありません。坐骨神経痛の原因には、さまざまな病気がありますが、中でも特に「女性ならでは」の病気が、「腰椎変性すべり症」と骨粗しょう症による「いつのまにか骨折」です。

「腰椎すべり症」とは、坐骨神経痛の主な原因である、腰部脊柱管狭窄症を招く病気です。
腰椎すべり症には大きく分けて、「腰椎分離すべり症」と「腰椎変性すべり症」があります。個々の背骨をつないでいる部分が分離して不安定になった腰椎が、お腹側にずれて起こるものを「腰椎分離すべり症」と呼びます。個々の背骨の分離はないけれども、椎間板や椎間関節が変化し、それに伴って腰椎の安定性が失われてお腹側にずれ(すべり)があらわれるものを「腰椎変性すべり症」と呼びます。女性の坐骨神経痛の原因として多く見られるのは、「腰痛変性すべり症」で、この病気の約8割が女性です。

「坐骨神経痛の7割は腰部脊柱管狭窄症によるものですが、そのうちの1~2割が腰椎変性すべり症によるものです。腰椎変性すべり症の原因ははっきりしていませんが、女性ホルモン(エストロゲン)の低下が関係していることが分かっています。エストロゲンの低下によって起こるので、50歳以降の女性に多くみられます。閉経前後に腰痛や脚のしびれがあらわれ始めたら、この病気を疑っていいでしょう」(田村先生)

 
60歳以降は骨粗しょう症による「脊椎圧迫骨折」に注意を!

「背中が曲がってきた」「背が縮んだ気がする」「腰が痛い」などの症状は、骨粗しょう症による「いつのまにか骨折」かもしれません。「いつのまにか骨折」は、正しくは「脊椎圧迫骨折」と呼ばれる病気で、背骨の本体である椎体(ついたい)に力がかかった際、骨が圧迫されてつぶれてしまうことです。骨折したことにすぐには気付かないことが多いため、「いつのまにか骨折」とも呼ばれます。

「本来、椎体(背骨)はそう簡単につぶれることはありませんが、骨粗しょう症がある場合や高い所から落ちるなど縦方向に強い負荷がかかったときなどにつぶれることがあります。骨粗しょう症は、骨の内部がスカスカになり、骨がもろくなる病気です。そのため、尻もちをつくなどちょっとしたことで背骨がつぶれてしまうのです。背骨が圧迫骨折を起こすと、椎体が押しつぶされて脊柱管が狭くなり坐骨神経を圧迫します。そのため、坐骨神経痛があらわれるのです」(田村先生)

骨粗しょう症も、腰椎変性すべり症と同様に、女性ホルモン(エストロゲン)の低下が原因で起こります。閉経を迎えた女性は骨粗しょう症になりやすく、60代の3人に1人といわれるほど。60歳以降の女性で、腰痛や脚のしびれがあらわれ始めたら、骨粗しょう症からの脊椎圧迫骨折(いつのまにか骨折)が起きている可能性があります。脊椎圧迫骨折は、骨折連鎖(1カ所骨折すると、次々に骨折しやすくなること)によって背中や腰が曲がる、背が縮むなどの症状につながる他、場合によっては寝たきりになってしまうこともあります。早めに整形外科や脊椎専門外来を受診しましょう。

 

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取材・文/笑(寳田真由美)

 

 

<教えてくれた人>

田村睦弘(たむら・むつひろ)先生

平和病院副院長・横浜脊椎脊脊髄病センター長、高月整形外科病院・脊椎センター長兼任。日本整形外科学会認定整形外科専門医。日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医。『完全図解 坐骨神経痛のすべて 自分で治すプログラムつき』(主婦の友社)、『女性のつらい「坐骨神経痛」はこうして改善する!』(PHP研究所)など著書多数。

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