坐骨神経痛とは、腰から足にかけて延びている坐骨神経が、さまざまな原因によって圧迫されたり、刺激されたりすることであらわれる、痛みやしびれなどの症状を指します。
坐骨神経痛の原因となる病気はいくつかあり、また、症状がよく似ていても坐骨神経痛ではない場合もあります。そこで、平和病院副院長で横浜脊椎脊髄病センター長の田村睦弘先生に症状の見極め方や治療方法、痛みを改善するセルフケアのやり方などを教えていただきました。
前の記事「お風呂に入るのはよい? お酒は飲まないほうがいい? 坐骨神経痛Q&A/坐骨神経痛(23)」はこちら。
坐骨神経痛のなりやすさやリスクが高い人などについての疑問に、田村先生に答えていただきました。
Q1:年をとったら、誰でも坐骨神経痛になるのですか?
A.
坐骨神経痛の主な原因は、腰部脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアです。実は腰椎椎間板ヘルニアは、20代で発症する人が最も多く、症状として坐骨神経痛があらわれる人も少なくありません。一方、腰部脊柱管狭窄症の場合、大半は加齢によって起こります。ですが、「年をとったから仕方ない」と見過ごすのは危険です。神経が強く圧迫されるようになると、下肢のマヒや排尿障害など深刻な症状が出てきて日常生活に支障が出るようになります。また、神経の圧迫が長く続くと、治療をしても症状が消えにくくなることもあるので早めに整形外科で相談してください。
Q2:坐骨神経痛は遺伝しますか?
A.
遺伝子研究が進んだ結果、人それぞれになりやすい病気があることが分かってきました。坐骨神経痛の主な原因の一つである腰椎椎間板ヘルニアも、家族に発症したことがある人が居る場合、同じ家族の中に起こりやすいことが知られています。ですが、遺伝子的になりやすい要因を持っていたとしても、良い姿勢を心がけるなど腰にやさしい生活をしたり、筋肉を鍛えたりすることで、坐骨神経痛は予防できます。また、なりやすい遺伝子を持っていたとしても、必ず発症するわけではありません。
Q3:坐骨神経痛になりやすいタイプの人はいますか?
A.
椎間板の強弱には個人差があり、神経の通り道の太さも人それぞれ。そのため、一概にどういった人がなりやすいとはいえません。しかし、太ると腰への負担が増すことは確かです。特に、お腹に脂肪が付く内臓脂肪型肥満は、お腹がせり出すため、常に反り返った姿勢となり、脊柱や下肢の骨の配列が崩れる要因となります。腰に負担がかからないようにするためには、肥満は解消した方がよいでしょう。また、喫煙習慣のある人や筋肉の少ない痩せ過ぎの人、激しいスポーツを行う人などは坐骨神経痛のリスクが高まりやすいので注意しましょう。
Q4:ストレスで腰が痛くなることがあるのですが、坐骨神経痛でしょうか?
A.
腰椎椎間板ヘルニアの原因は、腰に負担のかかるスポーツや重度の労働などの物理的要因が主たるものですが、痛みを人一倍感じやすくなるという意味では、不安やうつ、過度の自制心、仕事のストレス、仕事への集中度や満足度、失業なども、深く関わっているといわれています。環境を変える、上手にストレス解消できるものを見つけるといったことも大切だと考えられます。原因が分かっていない場合は、一度、整形外科や脊椎専門外来を受診してみるといいでしょう。
次の記事「マッサージを受けてもいい? 湿布は冷・温どっちがいい? 坐骨神経痛Q&A/坐骨神経痛(25)」はこちら。
取材・文/笑(寳田真由美)