風邪を引いた後に鼻水が出続けたり、鼻づまりが治らなかったり、緑色の鼻水が出る......。もしかして、その症状は風邪ではなくて「副鼻腔炎(ふくびくうえん)」かもしれません。副鼻腔炎はその名前の通り、顔の内側にある「副鼻腔」という部位が細菌によって炎症を起こしてしまう疾患です。鼻づまりや鼻水がたれるなどをはじめとした症状が現れ、頭痛や鼻づまりによる息苦しさなどもあるため、日常生活にも支障をきたすことも多いです。
副鼻腔炎の症状や原因、治療方法、予防法などについて、副鼻腔炎の診断と治療を専門とする東京女子医科大学病院の野中学先生にお聞きしました。
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市販薬や漢方薬に頼らずに、早めに病院へ
副鼻腔炎には、病院処方の薬だけでなく、ドラッグストアで購入できる市販薬や漢方もあり、また、さまざまな民間療法もあります。しかし、なかには十分な医学的根拠がないようなものも......。副鼻腔炎の第一人者である野中学先生に、副鼻腔炎にまつわるうわさの真相を伺いました。
Q 副鼻腔炎がツボ押しで治るって本当?
A ツボ押しで治ることはありません。
確かに、顔面には多くの神経が通っているため、東洋医学でいう「ツボ」は多くあります。しかし、あくまで科学的な根拠のない民間療法の治し方です。副鼻腔炎の治療は医療機関で行うことが原則です。決してツボ押しで治そうとはしないでください。自己治癒しようとすることで受診が遅れて、かえって症状を悪化させてしまうリスクが高いです。
Q 副鼻腔炎は人にうつる?
A うつることはありません。
急性副鼻腔炎は風邪やインフルエンザが原因で発症することが多いので、そう考えられたのでしょう。副鼻腔炎そのものが飛沫感染などでうつることはありません。
Q 副鼻腔炎にはL-92乳酸菌が効くの?
A 根拠はありませんが、食べてもよいでしょう。
L-92乳酸菌はⅠ型アレルギーの改善に役立つといわれていて、Ⅰ型アレルギーのひとつであるアレルギー性鼻炎の改善に役立つともいわれています。ただし、副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎は異なる疾患のため、副鼻腔炎とL-92乳酸菌の関連性はまだわかっていません。それでも、乳酸菌は、腸内フローラ(腸内環境)を整える役割を持っていて、体に悪さをするものではないので、食べてもよいでしょう。
Q 虫歯が副鼻腔炎の原因になるの?
A 虫歯は副鼻腔炎の原因になりえます。
緑色の鼻水があって歯痛があるときは要注意。上の歯と頬の中にある副鼻腔(上顎洞)は近い距離にあります。そのため、虫歯やインプラントのぐらつきなどが原因となって、歯根部(歯の根元)から菌が入って、「歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)」と呼ばれるタイプの副鼻腔炎になることがあります。原因となる歯は、上顎の第一大臼歯と第二大臼歯と呼ばれる奥歯と決まっています。治療には、まずは抜歯などの歯の治療を行うことが必要です。それから、上顎洞の治療を行います。
Q 市販薬で副鼻腔炎を治すことはできる?
A 市販薬で治療をすることはできません。
副鼻腔炎に関連する漢方薬などが市販されていますが、副鼻腔炎にもさまざまなタイプがあり、そのタイプに合わせた治療を行う必要があります。漢方薬だけで副鼻腔炎を治療することはできません。決して市販薬に頼って治そうとせずに、早い段階で耳鼻科を受診することを強くお勧めします。
Q 副鼻腔炎が学力を低下させる?
A 痛みや不快感によって、集中力が低下します。
副鼻腔炎になると、鼻づまりを起こしたり、頭痛や頭重感などの不快症状が現れます。呼吸しづらいと、もちろん物事に取り組むときの集中力も落ちてしまいますので、学業や仕事に悪影響を与えてしまうのです。
Q そもそも副鼻腔ってどうしてあるの?
A はっきりした理由はわかっていません。
頭の重みを軽減させるという理由や、声を反響させるためなど、諸説あります。しかし、確かな理由はわかっていません。
取材・文/東江夏海(デコ)