坐骨神経痛とは、腰から足にかけて延びている坐骨神経が、さまざまな原因によって圧迫されたり、刺激されたりすることであらわれる、痛みやしびれなどの症状を指します。
坐骨神経痛の原因となる病気はいくつかあり、また、症状がよく似ていても坐骨神経痛ではない場合もあります。そこで、平和病院副院長で横浜脊椎脊髄病センター長の田村睦弘先生に症状の見極め方や治療方法、痛みを改善するセルフケアのやり方などを教えていただきました。
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筋肉や靭帯の緊張をほぐし、血行を良くして痛み物質を排出
「神経の圧迫が続くと、その刺激で痛み物質や炎症を引き起こす物質が出現します。そこに血行不良が加わると、これらの物質の排出が滞り、慢性的な痛みが起こると考えられます。痛みのために背中や腰、お尻の筋肉や靭帯がこわばり、その部分の血行も低下するため、痛み物質や炎症物質がたまりやすくなるのです。ストレッチは、筋肉や靭帯の緊張をほぐしてこわばりを改善し、血行を良くして痛み物質などの排出を促します。朝起きたときや寝る前、長時間同じ姿勢でいる際の合間などに行うとよいでしょう」(田村先生)
●ストレッチのやり方
腰を中心に、背中、お尻、股関節、太ももの裏側の筋肉を、1カ所20~30秒ほどキープして伸ばすのが基本です。下記のストレッチを参考に、各部位の筋肉を気持ちよく伸ばしましょう。
【腰と背筋伸ばし】
1)仰向けになって寝転び、おへそをのぞき込むようにして頭を持ち上げ、両脚を両腕で抱えます。
2)腰から背中の筋肉が気持ちよく伸びたところで止めます。
3)そのまま呼吸をしながら30秒数えましょう。
【お尻の筋肉伸ばし】
1) 仰向けになって寝転び、片脚を両手で抱え、ゆっくりと胸に引き寄せていきます。
2) お尻の筋肉が気持ちよく伸びたところで止めます。
3) そのまま呼吸をしながら30秒数えましょう。逆の脚も同様に行います。
【背中の筋肉伸ばし】
1) 四つんばいになります。
2) 脚はそのまま、床を滑らすように両手を前にスーッと伸ばして、お尻を上に突き出すようにします。
3) おでこを床につけて、背中の筋肉が気持ちよく伸びているのを感じます。
4) そのまま呼吸をしながら30秒数えましょう。
【全身の筋肉伸ばし】
1) 仰向けになって寝転び、両手を頭の上に伸ばします。
2) 手と足がそれぞれ外方向に引っ張られているように体全体が気持ちよく伸びているのを感じます。
3) そのまま呼吸をしながら30秒数えましょう。
ストレッチを安全に行うために、次のポイントを覚えておきましょう。
●「気持ちいい」感覚が大切です。
ストレッチをしていて気持ちいい、ラクになると感じる体操を行いましょう。痛みが出るような動作は避けましょう。くれぐれもやり過ぎは禁物です。
●呼吸を止めずに行います。
腰や背中、お尻などを気持ちいいと感じるところまで伸ばすときは、息をゆっくり吐きながらキープすると効果的です。呼吸は止めないようにしましょう。
●筋トレをプラスして腰の負担を軽減。
腰を支える筋肉を鍛えるには、筋トレが有効です。筋肉を鍛えることで腰の負担が減り、坐骨神経痛の悪化を抑えられるだけでなく、体をラクに動かせるようになります。筋トレは毎日ではなく、1日おきに行うようにしましょう。
【腰を痛めない腹筋(筋トレ)のやり方】
1) 仰向けになって両ひざを立てます。
2) 両腕を足の方に伸ばし、ひざに触ろうとするように頭と肩を浮かせていきます。
3) お腹に力を入れ、呼吸をしながら5秒数えましょう。
回数は何回でもOK
取材・文/笑(寳田真由美)