肩の痛みの予防には、筋肉を動かすストレッチや深い呼吸が大切/四十肩・五十肩

40代を過ぎて、肩が痛い、腕が上がらないという時にまず思い浮かべるのが、四十肩・五十肩ではないでしょうか。「そのうち治るだろう」「年をとったから痛くなっただけ」と自分で判断し、放っておく人も多いですが、実は、いつ爆発するかわからない「爆弾」を抱えているのと同じ。気づかないうちに重症化していて、手術が必要となる場合もあるので、軽く考えるのは禁物です。

肩の仕組みをはじめ、四十肩・五十肩の原因や症状、予防法などを、麻生総合病院 スポーツ整形外科部長で、肩関節の治療を専門とする鈴木一秀先生にお聞きしました。

肩の痛みの予防には、筋肉を動かすストレッチや深い呼吸が大切/四十肩・五十肩 pixta_42543074_S.jpg前の記事「その肩の痛みに注意! 内臓疾患などの原因が潜んでいることも/四十肩・五十肩(12)」はこちら。

 

悪い姿勢は筋肉にも呼吸にもよくありません

四十肩・五十肩は、加齢に加え、日常の何気ない動作や生活習慣の積み重ねによっても引き起こされます。できるだけ発症を防ぐためには、日々の姿勢や体の使い方などを意識し、体に歪んだ負担をかけないセルフケアが大切。どんなことに気をつけて生活したらいいのでしょうか。

■姿勢
「姿勢が悪いだけで、肩の筋肉や靭帯、腱などは本来の正しい方向とは違う方向に引っ張られます。不必要な刺激を受けやすく、炎症を起こす原因にもなります」と、鈴木先生。
例えば、背中が曲がっていると、腕は十分に上げられません。無理やり上げようとすると、肩には過度な負担がかかってしまいます。

【立っている時】
横から見て耳のライン、肩峰(けんぽう。肩の一番上の尖っている部分)、股関節の骨、ひざ、くるぶしが上から下まで一直線になるのが、正しい姿勢です。

【座っている時】
椅子に腰掛けた時、背筋が伸びた状態で、股関節が90度、ひざも90度に曲がっているのが、よい姿勢。パソコンを使う時は、ひじを浮かせると肩にも腕にも負担がかかるので、机にひじを乗せた状態で向かいましょう。腕の重みを感じず、肩周辺の筋肉もリラックスして、負担を軽減できます。

 

■筋肉トレーニング
正しい姿勢を維持するには、背中の脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)、おなかの腹直筋(ふくちょくきん)、腰の腸腰筋(ちょうようきん)、お尻の大臀筋(だいでんきん)、太もも前の大腿四頭筋(だいたいしとうきん)、ふくらはぎの下腿三頭筋(かたいさんとうきん)など、さまざまな筋肉が働いています。運動不足で筋力が衰えていると、姿勢が悪くなります。

また、肩は体の上のほうにありますが、下半身の影響を受けやすい部分でもあります。下半身が体幹を支え、その上に肩があり、頭部を支えているためです。肩にこわばりや違和感、肩凝りを感じている人は、下半身の筋肉が衰えている可能性もあります。全身の筋肉のバランスを見ながら、ストレッチや筋肉トレーニングなどで整えていくことが大切です。

 

■呼吸
前屈みや猫背の姿勢は、腹部を圧迫した状態であり、胸郭(きょうかく。肋骨で覆われている部分)が十分に広がらず、呼吸が浅くなります。すると、全身に送る酸素が少なくなり、各器官の機能が低下。これを防ぐために、肩や首の筋肉を大きく使って呼気を補おうとするため、肩や首に負担がかかります。最近は、胸郭や大胸筋(だいきょうきん)などの部位が、肩の状態に関与しているという研究も進められています。

姿勢を正し、胸郭を広げることを意識しながら呼吸しましょう。

 

次の記事「簡単で道具も不要! 肩の痛みや凝りを予防&軽減するストレッチ/四十肩・五十肩(14)」はこちら。

取材・文/岡田知子(BLOOM)

 

 

<教えてくれた人>
鈴木一秀(すずき・かずひで)先生

麻生総合病院 スポーツ整形外科部長、医学博士。1990年、昭和大学医学部卒業。肩治療のスペシャリストとして、スポーツ整形外科、肩肘関節外科、関節鏡視下手術を専門分野とし、これまでに治療してきた患者数は6,000人を超える。日本肩関節学会代議員、日本整形外科スポーツ医学会代議員などのほか、早稲田大学ラグビー蹴球部のチームドクターも務める。著書に『「肩」に痛みを感じたら読む本』(幻冬舎メディアコンサルティング)。

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