放置しないで! 足の爪の異常は「寝たきり」を引き起こすことも/足の爪の変形

放置しないで! 足の爪の異常は「寝たきり」を引き起こすことも/足の爪の変形 pixta_15875322_S.jpg普段はあまり気にすることのない、足の爪。小さなパーツですが、変形したり、色が変わったりしていませんか? 巻き爪をはじめとする足の爪の異常は、実は歩き方や姿勢などの生活習慣や外反母趾など、さまざまな要因の積み重ねから複合的に起こっているもの。大したことないと思っていると、やがて強い痛みを伴い、歩行困難にもつながるので、注意が必要です。

さまざまな足の爪の異常やその原因、正しいセルフケアの方法を、皮膚科医で、「日本フットケア学会」の理事も務める高山かおる先生にお聞きしました。

前の記事「薄くなったり線が入ったり。気をつけたい足の爪の異常あれこれ/足の爪の変形(9)」はこちら。

 

小さな異変に骨や体の不調が隠れていることも

「小さなトラブルだから大したことない」と思い込んで、足の爪の異常を放置するとどうなるのでしょうか。爪の病気自体は命に関わることは少ないですが、普通の日常生活を送れなくなることも十分に考えられます。

さまざまな要因から足の爪にトラブルが生じると、体のバランスも変わってきます。「巻き爪」や「陥入爪(かんにゅうそう)」になると痛みを伴うほか、「肥厚爪(ひこうそう)」になると足に力を入れにくくなったり、靴に当たって痛くなったりします。

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「これらの症状が悪化すると、爪や痛みをかばって徐々に歩行が困難になり、歩くのが嫌になりますよね。もし、足が痛くて歩けなくなると、体はとたんに弱ります。足は動くことによって、心臓から一番遠い下肢に血液を循環させる"ポンプ機能"の役割を果たしています。そのため、『足は第二の心臓』と呼ばれていますが、動かさないでいると血流が悪くなり、足腰が弱り、ますます歩かなくなる...という悪循環に陥ってしまうのです。

また、爪も皮膚の一部なので、指先まで血液がしっかり流れなければ、爪の新陳代謝も悪くなり、割れやすくなったり厚くなったり、さらにトラブルが増えてしまいます」と、高山先生。

「小さな足の爪のトラブルによってうまく歩けなくなると、転倒などから寝たきりになる危険性も高まります」と、警鐘を鳴らします。

「足の爪のトラブルは、『たかが爪』のトラブルではありません。例えば、『巻き爪』を訴えて来院したある患者さんは、足の裏にたくさんのタコができていて、さらに足の前方の横アーチが崩れている『開張足』や『外反母趾』といった足の骨の変形も伴っていました。話を聞いてみると、ひざや股関節の痛みにも悩んでいました」。

つまり、「たかが巻き爪」と思っていた症状は、実は足の骨のゆがみなどの影響を複合的に受けて起こっていて、それがひざ痛など体の不調を引き起こすこともあるのです。
足の爪の異常には何かしらの原因があるものです。歩き方や立ち方、靴の選び方など、その原因の根本と向き合うことが、足だけでなく、全身の健康を保つためにも必要だといえます。

また、特に気をつけなければいけないのが、糖尿病の持病がある場合。高血糖状態が続くと、下肢の動脈硬化が進んで足の血流が悪くなったり、末端の神経障害を起こしたりします。そうすると、免疫機能が低下し、感染症にもかかりやすくなります。
ささいな爪や足の病変から細菌感染を起こし、足の潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)に進み、重篤な場合は足や指を切断する場合もあります。

例えば、爪白癬(つめはくせん)などで爪が分厚くなると、靴を履いている時に圧迫されて次第に足の親指が壊死(えし)することもあるのです。

足の爪は小さいながらも、体重を支え、体にとって重要な役割を果たすパーツです。健康状態を示すバロメーターでもあるので、普段から自分の爪の状態に気をつけておきたいものです。

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次の記事「爪の切り方は"スクエアカット"が理想です/足の爪の変形(11)」はこちら。

取材・文/岡田知子(BLOOM)

 

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高山かおる(たかやま・かおる)先生

医師・医学博士。済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学臨床准教授。接触性皮膚炎、フットケアを専門とする。難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪などの疾患に対し、トラブルの根治を目指した原因の追求、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。「100歳まで自分の足で歩ける社会」を目的に発足した「足育研究会」の代表、日本フットケア学会の理事を務め、フットケアの啓発活動も行っている。著書に『巻き爪、陥入爪、外反母趾の特効セルフケア』(マキノ出版)、監修に『皮膚科医が教える本当に正しい足のケア』(家の光協会)

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