普段はあまり気にすることのない、足の爪。小さなパーツですが、変形したり、色が変わったりしていませんか? 巻き爪をはじめとする足の爪の異常は、実は歩き方や姿勢などの生活習慣や外反母趾など、さまざまな要因の積み重ねから複合的に起こっているもの。大したことないと思っていると、やがて強い痛みを伴い、歩行困難にもつながるので、注意が必要です。
さまざまな足の爪の異常やその原因、正しいセルフケアの方法を、皮膚科医で、「日本フットケア学会」の理事も務める高山かおる先生にお聞きしました。
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菌の感染や体の疾患など原因はさまざま
「巻き爪」、「陥入爪(かんにゅうそう)」、「肥厚爪(ひこうそう)」「爪白癬(つめはくせん)」の4つが足の爪に見られる主な病変ですが、ほかにもさまざまなトラブルがあります。代表的な症状としては、以下のようなものがあります。
●爪乾癬(つめかんせん)
爪が黄色っぽく変色・混濁し、厚くなるので、「爪白癬」と間違えやすいですが、これは尋常性乾癬(炎症性の皮膚疾患)の症状がある人に出やすいのが特徴。皮膚のターンオーバー(新陳代謝、生まれ変わり)が速くなり、角質層と表皮が厚くなる病気です。爪に点状のへこみも現れ、進行する爪を切ることも困難に。光線療法や内服薬などで治療します。
●爪扁平苔癬(つめへんぺいたいせん)
原因不明の皮膚病で、全身の皮膚や口の中、爪などに症状が現れます。爪の場合は、爪が薄くなり、縦に線や亀裂が入って砕けたり、萎縮して爪がなくなったりすることも。最近では、自己免疫疾患の1つだとも、また、C型肝炎や金属アレルギーに関係するとも考えられています。ステロイド薬などで治療します。
●爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)
爪が、爪の下の皮膚の部分「爪床(そうしょう)」からはがれ、白く浮き上がってしまう症状。詳しい原因はまだわかっておらず、外傷のほか、甲状腺機能の低下によるとも考えられています。また、料理人や美容師など、手の指先をよく使う職業の人に多い症状ともいわれています。決定的な治療法はなく、患者によって発症の原因を探りながら、考えていきます。
●爪囲炎(そういえん)
爪の周囲がささくれや深爪などで傷つき、そこから雑菌が入って、爪の周囲が赤く腫れたりする症状。「巻き爪」や「陥入爪(かんにゅうそう)」の状態の時に発症することも多いです。
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●爪カンジダ症
真菌(カビ)の一種「カンジダ」による感染症。通常は悪さをしない皮膚の常在菌ですが、免疫の働きが低下している時に感染する「日和見感染」です。真菌から感染し、爪が白濁・変形することがあるので、足や爪の「白癬(水虫)」にも見えますが、白癬は外からうつる点が大きな違いです。爪囲炎(上記参照)から始まることが多く、爪の周囲に痛みや赤みが出ます。気をつけたいのは、よく水を使う人、爪を伸ばしてペディキュアやマニキュアをしている人など。水にふれることやネイルを少し休んで、塗り薬で治療します。
●二枚爪
爪の先端の表面がむけて、剥離する症状で、一番の原因は乾燥。クリームなどを塗って保湿することで改善します。また、硬い爪を勢いよく切ると亀裂のもとになるので、お風呂上がりなどの爪が柔らかい時にゆっくり切りましょう。
●スプーンネイル
スプーンのように爪の先が反りかえって、中央がくぼんでしまう爪のこと。爪の薄い人がなりやすく、鉄分不足による貧血、甲状腺疾患、爪扁平苔癬(上記参照)の疑いがありますが、手の爪に多い症状で、足の爪に発症することは稀です。
●爪の腫瘍(がん)
爪に黒い線が出る皮膚がんの一種「メラノーマ(悪性黒色腫)」のほか、「ボーエン病」という皮膚がんの一種が爪にできる場合があります。爪の下の浅い部分に腫瘍ができ、痛みなどはありませんが、爪の表面から見るとある部分が厚ぼったくなっているように感じます。手術による切除などで治療します。珍しい病気ですが、進行すると指そのものを切断したり、とくに悪性の場合は転移したりすることもあります。
いずれの場合も自己判断は禁物です。市販の外用薬などで治療したりすると、かえって悪化する場合もあるので、まずは近隣の皮膚科で診察を受けましょう。
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取材・文/岡田知子(BLOOM)