足の指の間がかゆい、水ぶくれができる、皮がむける...これらはすべて水虫の症状です。日本人の5人に1人が水虫に感染しているといわれています。水虫の原因は「白癬菌(はくせんきん)」というカビ(真菌・しんきん)です。白癬菌による感染症を「白癬」といい、実はこのカビ、足だけでなく手や頭など体のいろいろなところに棲みつくことができるのです。
そんな白癬菌の性質や特徴、治療法や予防法を、白癬治療の第一人者、仲皮フ科クリニック院長の仲 弥先生に伺いました。
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白癬菌が足に付いたまま長時間過ごすと水虫になります
白癬菌の感染力は強くありません。菌が付着してから皮膚に寄生するのに通常24時間以上かかるといわれています。空気感染もしませんので、吸い込んでも問題は起きません。
それではどのような状況で感染するのでしょう。
白癬の中で一番多い足白癬、いわゆる水虫の場合で考えてみましょう。
白癬菌は足からはがれ落ちた角質(アカ)の中に潜んでいます。アカを栄養源にして、長ければ1年も生き続けることができます。落ちているアカの上を別の人が素足で歩くと白癬菌が付着してしまうのです。
不特定多数の人が裸足で過ごす場所には、白癬菌はほぼ100%いると思ってください。特に浴場など高温多湿な場所は白癬菌にとって絶好の棲みかです。
例えば以下のような場所や物は要注意です。
・浴場のバスマット
・温泉施設の脱衣所
・プールの脱衣所
・飲食店やクリニックに置いてあるスリッパ
・飲食店の畳
バスマットなどを踏むことで白癬菌のいるアカが足に付着してしまいます。足が乾燥してこのアカが足から落ちてしまえば感染することはありませんが、足が湿ったまま靴下や靴を履いたりして白癬菌が付いたまま長時間過ごすと、水虫に感染してしまうのです。
24時間以内に足を洗えばOK! 白癬菌の感染予防術
では、どうすれば水虫の感染を防ぐことができるのでしょう。まず、水虫の特性から考えてみましょう。
水虫の原因はカビの一種である「白癬菌」です。
白癬菌の特徴は
1.高温多湿の場所を好む。
2.死んだ細胞(いわゆる角質、アカ)の中でしか生きられない。
3.体に菌が付いても、通常は寄生するまで24時間以上かかる。
ということは、白癬菌が足に付いたとしても、すぐに水虫にはならないということなのです。
白癬菌は湿度100%の環境でも、角質層の中に入り込むのには24時間以上かかるといわれています。そしてアカと一緒にいる菌は水で流すことができます。だから、菌が付いてから24時間以内に足を洗えば、感染を防ぐことができるのです。
例えば、温泉やプールなどに行って帰宅したら、まず足を洗う。こうすれば感染することもないですし、家の中に菌をばらまいてしまうことも防げます。
ただし、皮膚に傷があると白癬菌は感染しやすくなります。目に見える傷だけではなく、角質層にできた傷でもです。ですから足を洗うときは、ゴシゴシこするのはやめましょう。アカスリや軽石など皮膚を傷める原因になることも避けた方がよいですね。
足を洗うときは石鹸を泡立てて手で洗うので十分です。特に足の指の間を重点的に洗うとよいでしょう。
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取材・文/ほなみかおり
慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部皮膚科医長、同・皮膚科専任講師を経て、1996年に仲皮フ科クリニック(埼玉県川越市)を開業。真菌のエキスパートとしてメディアに多数出演。埼玉県皮膚科医会会長、日本臨床皮膚科医会参与(前副会長)、日本皮膚科学会代議員、埼玉県皮膚科治療学会理事、日本医真菌学会評議員、日本皮膚科学会認定専門医。