普段はあまり気にすることのない、足の爪。小さなパーツですが、変形したり、色が変わったりしていませんか? 巻き爪をはじめとする足の爪の異常は、実は歩き方や姿勢などの生活習慣や外反母趾など、さまざまな要因の積み重ねから複合的に起こっているもの。大したことないと思っていると、やがて強い痛みを伴い、歩行困難にもつながるので、注意が必要です。
さまざまな足の爪の異常やその原因、正しいセルフケアの方法を、皮膚科医で、「日本フットケア学会」の理事も務める高山かおる先生にお聞きしました。
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靴だけじゃない! 歩き方や立ち方が一大要因
足の爪の異常を引き起こす原因の1つに、足の骨の変形があります。その中でも、特によく名前を知られているのが「外反母趾(がいはんぼし)」です。
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「外反母趾」は、足の親指の関節が外側に飛び出し(外反)、小指側に向いて曲がってくる足の病変のこと。足のアーチが崩れる「開張足(かいちょうそく)」に伴うことの多い症状です。進行すると、親指の爪が横の指からの圧迫を受けやすくなり、「巻き爪」や「陥入爪(かんにゅうそう)」、「肥厚爪(ひこうそう)」などの原因となります。
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「足の親指はもともと少し内側に曲がっています。その角度が15度未満なら正常範囲ですが、15度以上になると外反母趾と診断できます。少しずつ進行し、曲がる角度が大きくなるほど足全体の変形につながります。15~25度なら軽度、25~40度未満なら要注意の中等度、40度以上になると重症で、親指が人さし指の上に乗ったり、反対に下にもぐり込んだりすることもあります」と、高山先生。
また、足の小指の関節が親指方向に向かって変形(内反)する「内反小趾(ないはんしょうし)」という症状もあります。内反する角度が10度以上になると診断され、20度以上なら中等度、30度以上なら重度です。これも、「開張足」から「外反母趾」を併発していることがほとんどです。
どちらも、歩き方や立ち方の悪い癖が大きな原因。これに、運動不足や加齢による筋力の衰えなどが関わって、骨の変形につながります。
足に合わない靴も、症状を助長させる一因だといわれています。特に女性に多いですが、つま先の狭い靴やハイヒールを履くと親指や小指が圧迫されて曲がっていきます。ですが、外反母趾や内反小趾の症状は子供や男性にも見られることから、靴だけのせいではありません。やはり根本にあるのは足裏や足指の筋力が衰え、横アーチが崩れてくることなのです。
骨の変形が進むと、1つの指が隣の指に圧迫されたり、指が靴に当たったりして、爪にも負担がかかります。そして、痛みなどから歩行が困難になるだけでなく、痛みや足に力が入らないことなどから歩き方や立ち方のゆがみも引き起こします。そして、それが首や肩のこり、腰痛、ひざ痛の要因になるなど、その影響は全身に及びます。
「靴は二次的要因ではありますが、まずはハイヒールなどを避け、ウォーキングシューズなど足への圧迫がない靴を履くようにしましょう。足の横アーチをサポートするインソール(靴の中敷き)によって足への負担を和らげる免荷(めんか)療法のほか、足の指と足の裏の筋肉を鍛える以下のようなエクササイズも効果的です。ただし、重度の外反母趾の症状がある人は、行わないようにしましょう」(高山先生)。
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●足指じゃんけん
足の指をグー、チョキ、パーと開いたり閉じたりする運動。5本の足の指をぎゅっと縮め(グー)、次に親指だけを伸ばします(チョキ)。そして、5本の指を思い切り広げます(パー)。1日20回、2日に1回を目安に行いましょう。
●タオルギャザー
足の指でタオルを集める運動。大きめのタオルを床に敷いた上に立ち、足の指のつけ根を深く曲げるようにしてタオルを引き寄せます。タオル1枚分を引き寄せられれば十分。やりすぎには注意しましょう。
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取材・文/岡田知子(BLOOM)
高山かおる(たかやま・かおる)先生
医師・医学博士。済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学臨床准教授。接触性皮膚炎、フットケアを専門とする。難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪などの疾患に対し、トラブルの根治を目指した原因の追求、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。「100歳まで自分の足で歩ける社会」を目的に発足した「足育研究会」の代表、日本フットケア学会の理事を務め、フットケアの啓発活動も行っている。著書に『巻き爪、陥入爪、外反母趾の特効セルフケア』(マキノ出版)、監修に『皮膚科医が教える本当に正しい足のケア』(家の光協会)