毎朝出てるのにおなかが張る、おならが出てしまう。それって「出口の便秘」かも。肛門科医師・佐々木みのり先生に聞く「正しい排泄」

――温水洗浄便座を使うことで発生するおしりのトラブルについては、先生の前著『痛み かゆみ 便秘に悩んだら オシリを洗うのはやめなさい』(あさ出版)で詳しく書かれています。

佐々木:おそらく多くの方が温水洗浄便座を習慣的に使っていると思います。だけど、おしりを洗いすぎると皮膚を守る皮脂膜がはがれて皮膚がごわごわになり、水圧で肛門が傷つくおそれがあります。さらに肛門まわりの皮膚が突っ張って、収縮性のない肛門になりがちです。いわゆる〈おしりの穴が小さい〉状態にね。その結果、便を出しにくくなり、おしりの中に便が残ってしまう。なので、私は痔や便秘の方にはまず温水洗浄便座の使用をやめるよう勧めています。

――排便後に肛門を水で洗わなくてもいいのでしょうか?

佐々木:いいんです。トイレットペーパーをふわっと丸め、おしりをぽんぽんと押さえるように拭くだけで十分。

――『便秘の8割は~』とてもおもしろかったです。おもしろい上、勉強になりました。

佐々木:それはよかった。嬉しいことに患者さんからも好評でして、「先生が普段言ってることが全部書かれてありますね」「これは便秘の教科書ですね」なんて感想をいただいています。イラストを担当してくださった、うてのてのさんのうんこのイラストがまたかわいくて、グッズにしてほしいくらい(笑)

毎朝出てるのにおなかが張る、おならが出てしまう。それって「出口の便秘」かも。肛門科医師・佐々木みのり先生に聞く「正しい排泄」 便秘の8割はおしりで事件が起きている!

――『便秘の8割は~』は、便秘に関して、かなり専門的なことが書かれていますが、平易な言葉で説明されているので分かりやすかったです。

佐々木:分かりやすく説明しないと、人には伝わらないですよね。それこそ病院で医師から専門用語を並べ立てられても、何を言ってるのか分からないでしょう。それに萎縮しちゃいますよね。私も肛門科医師になりたての頃はそうだったんです。だけどあるとき患者さんから診察中に「センセの言ってること分からへん」って言われて、はっと気がついて。患者さんの大事なおしりを任せられているんだから、患者さんに分かるように説明しなきゃダメなんだ、と。それからはもう、うんとかみ砕いたこんな説明をしています。「あんたのおしりに、カチカチになったうんこがぎょうさん詰まっとるねん」って(笑)

――「出口の便秘」はなかなか耳慣れない言葉ですが、患者さんはすんなり理解してくれますか?

佐々木:やっぱり最初はぴんとこないみたいですね。便秘イコール大腸に問題がある、と考えてる方がやっぱり多い。あなたは出口便秘です、と説明しても「じゃあ食物繊維を摂ればいいんですね」とか「下剤を飲めばいいんでしょうか」という反応がまず返ってくる。「いやいや、あなたの大腸は正常でちゃんと便を製造してますよ。問題はおしりの穴なの。そこに便が詰まっていて、それが『出口の便秘』なの」と繰り返し説明して、やっと分かってくれる。今日もそれ、取材の前に診た患者さんに言ってきました。だから少しでも「出口の便秘」を浸透させていきたいんです。

――自分が「出口の便秘」かどうか確かめる方法はありますか?

佐々木:薬局で坐剤(座薬)を買ってきて、便意のない状態のときにおしりに挿れてみてください。便が出てきたら「出口の便秘」です。または用を足した後、温水洗浄便座を使わずにおしりを拭いてみて。紙に便がついていなかったら健康おしりです。3回拭いても(便が)ついていたら「出口の便秘」と考えていいでしょう。

毎朝出てるのにおなかが張る、おならが出てしまう。それって「出口の便秘」かも。肛門科医師・佐々木みのり先生に聞く「正しい排泄」 便秘の8割はおしりで事件が起きている!
『便秘の8割はおしりで事件が起きている!』より

――「出口の便秘」になってしまったら、どうすればいいでしょう。

佐々木:やはり1度、肛門科医の診察を受けることをお勧めします。当院のHPに「日本の肛門科の歴史と現状~専門の医師を見分ける~」というページがあるので、ぜひ参考にしてください。全国の信頼できる肛門科の専門病院を掲載しています。

――特に女性では肛門科にいくのが恥ずかしいという人も多いと思うのですが。

佐々木:そこはもう勇気をもって! と言うしかないかなあ。大丈夫、肛門科の診察室は患者さんの恥ずかしさへの配慮がちゃんとされているんです。まして専門科ならいっそう。ちなみに当院では診察台に横向きに寝ていただいて、腰にバスタオルをかけて診察しています。けっしておしりを丸出しにはさせません。行ってみたい病院に予め電話して「そちらはどんなふうに診察をしていますか」と訊いてみるのもいいですね。診察スタイルの説明を受けたら不安感も減ると思うので。肛門科に行ったことのない方には敷居が高いかもしれませんが、便秘や痔でお悩みの方は市販の薬を服用するより、やはり専門クリニックを受診してみてください。

――これまで数多くのおしりを診てきた佐々木先生にとって、理想のおしりとはどんなおしりですか?

佐々木:赤ちゃんのおしりですね。肛門が狭くもない、しなやかに伸び縮みして、切れ痔もいぼ痔もなんにもないおしり。みんなきれいなおしりで生まれてきて、なのに生きていくうちにどんどん劣化していって... ...切ないですね。私たちはもう赤ちゃんのおしりに戻ることはできないけど、せめてこれ以上悪化しないようにしていきましょう。

――そのために必要なことは?

佐々木:やはり正しい排泄。これに尽きます。便意を感じたら我慢しないでトイレへいく。それもピークまで待つのではなく、感じたらすぐに。そうしたら、いきまなくとも、するりんと出ます。健康的なおしりは正しい排泄によって生まれます。便をしっかり出すことから健康は始まり、気分もよくなり、大げさじゃなく人生も変わる。長年、肛門科医師としてたくさんの患者さんを診てきた経験から、心からそう信じています。

 
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