日本人の多くが悩まされている便秘。「腸活しているのに治らない」「1日に何度も排泄しているのに残便感がある」。そんな悩みを抱えていませんか? 実はそれ、おなかに問題があるのではなく、便を排出する場所のおしりでトラブルが起きているのかもしれません。便秘で悩む人の8割以上が該当するという「出口の便秘」。女性肛門科医師の草分け的存在であり「出口の便秘」治療に長年取り組んでいる佐々木みのり先生にお話をうかがいました。
(取材・文=皆川ちか)
佐々木みのり●1912年創立、110年以上の歴史を持つ大阪肛門科診療所の副院長。肛門科女医の草分け的存在。1994年大阪医科大学を卒業後、大阪大学皮膚科学教室に入局。その後、4年間、大阪大学附属病院、大手前病院、東京女子医大病院などで皮膚科医として勤務した後、1998年に肛門科医に転身。同年7月には日本初となる「女医による肛門科女性外来」を開設。「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。また、元皮膚科医という経歴を持つ異色の肛門科医として、同業の医師を対象に多数の講演を行っている。『痛み かゆみ 便秘に悩んだら オシリを洗うのはやめなさい』(2020年あさ出版)は3万部超えのベストセラーに。「2時ドキッ!」「おはよう朝日です」「痛快!明石家電視台」「世界一受けたい授業」などのテレビほか、多数のメディア出演あり。
――佐々木先生の著書『便秘の8割はおしりで事件が起きている!』(日東書院本社)は、便秘についての世の中の誤解を解きたい思いで書かれたとのことですが。
佐々木みのり先生(以下、佐々木):そうなんです。私は肛門科医になって26年経ちますが、便秘に悩んでいる患者さんは本当に多いんです。一生懸命に腸活したり、下剤を飲んだりしているのになかなか治らない。実はそうした方たちの多くは、便秘は便秘でも「出口の便秘」なんです。
――「出口の便秘」とはなんでしょう?
佐々木:簡単に言うと、ふん詰まりです。大腸でつくられた便が直腸や肛門のところに留まって、スムーズに排出されない状態のこと。そこに詰まっている出残り便の上に新しい便がどんどんのっかるので、いろんな問題が起きてきます。出残り便は硬くなるので、おしりから出るときに肛門が傷付いて切れ痔になりやすいし、いぼ痔や痔ろうの原因にもなるのです。一般的に便秘というと、大腸に問題があると思うでしょう。もちろんそちらの便秘の方もいますが、私の経験でいうと便秘の方の8割は、こちらの「出口の便秘」です。
――8割も! 多いですね。
佐々木:もうね、その辺の道を歩いてる人をつかまえて、おしりを調べたら十中八九は「出口便秘」だと思う。(自分が「出口の便秘」だと)気づいていない方も多いんです。
――なぜ「出口の便秘」になるのでしょうか。
佐々木:日々の生活のなかで便意を我慢していると、なりがちです。学校や職場で「トイレにいきたいな」と思っても、すぐにいかない(いけない)とか。家族や配偶者の前でトイレにいくのを我慢したり。そうやって便意をこらえていくうちに便は出口にたまってしまいがち。それに、我慢を繰り返すと、便意がきてもちゃんと感じられない鈍感なおしりになってしまいます。
――便意を感じたら、すぐにトイレへいくのが大切なんですね。
佐々木:そう。温水洗浄便座もできるだけ使わない方が、おしりにはいいんですよ。