ウォーキング時の「NG姿勢」で腰痛・ひざ痛に!? 「姿勢・血圧・日光」が重要ポイントである理由

歩く前に血圧をチェックする

ウォーキングは、運動のなかでも危険性が比較的低いものです。でも、普段、運動習慣がほとんどない人が歩く習慣をつけようとする場合には、可能であれば、循環器的に問題がないかどうかを一度チェックしておくとよいでしょう。

完璧を期するためには、体力測定に加えて、運動負荷試験を行い、運動中の血圧や心拍数、心電図などの循環動態の変化を把握しておきます。ただし、「歩く」だけのダイエットを行うときには、そこまで厳密に測る必要はなく、最低限、家庭で血圧測定を行いましょう。

日本高血圧学会は、家庭血圧を測定するときには、起床時と就寝前(寝る直前)の測定を推奨しています。でも、降圧薬を飲んでいない人が歩く前の血圧チェックをするだけでしたら、起床時のみのチェックで十分だと思います。

起床後1時間以内にトイレをすませ、食事前に2回測定してください。2回の平均で、おおむね収縮期血圧(上の血圧)が140未満、拡張期血圧(下の血圧)が90以下であれば、ウォーキング前の準備としては問題ないでしょう。

一つでも超えたらだめというわけではありませんが、とくに上の血圧が140以上であった人は、定期的な血圧測定を習慣づけることをおすすめします。

高血圧症は歩行時の転倒リスクにも影響をおよぼす

アメリカ心臓病学会が発行する「アメリカン・ジャーナル・オブ・カーディオロジー」(2003年3月)に、高血圧の患者さんは、バランス能力が大幅に低下すると報告されています。イスラエルのテルアビブ大学で行われた研究によると、平均年齢78歳の高血圧の患者さん12人(男性4人、女性8人)と、同じ平均年齢78歳の正常血圧の12人(男性5人、女性7人)とで、バランス能力に関するテストを行いました。

具体的には、体が傾いたり転びそうになったりしたときに、反射的に体に力を入れたり、手足を出したりして、転ばないようにする機能の「姿勢反射」をみる「プルテスト」や、歩行速度、椅子からの立ち上がり、および方向転換の機能を評価する「タイムアップゴーテスト」などをやってもらったところ、高血圧の患者さんでは、正常血圧の人よりも悪いという結果が明らかになったのです。

つまり、高血圧症は心血管疾患につながるだけでなく、高齢者の場合には、生活の質と自立にとても重要なバランス能力や、歩行時の転倒リスクなどにも影響をおよぼすのです。
みなさんも、ご自身の血圧の目安を知る目的で、歩く前の血圧と歩いたあとの血圧を測定する習慣をつけておくことをおすすめします。

 

伊賀瀬 道也
愛媛大学大学院抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長。1964 年、愛媛県生まれ。1991年、愛媛大学医学部卒業後に第二内科(循環器)に入局。米国Wake Forest 大学・高血圧血管病センター(リサーチフェロー)、愛媛大学大学院老年神経総合診療内科特任教授などを経て2019 年4月より現職。約4000 人のドック受診者に指導を続けており、抗加齢医学研究のトップランナーとして知られる。『長生き1分片足立ち』(文響社)、『1分ゆるジャンプ・ダイエット』(冬樹舎)などの著書のほか、「NHKスペシャル」(NHK)などメディア出演も多数。

※本記事は伊賀瀬 道也著の書籍『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

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