ウォーキングをやみくもに始めてもかえって不健康に!? 高齢者、糖尿病の人の注意点

『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』 (伊賀瀬道也/PHP研究所)第1回【全2回】

ウォーキングが健康にいいことはわかっていても、ただやみくもに始めるのはかえって健康にマイナスになることもあります。ウォーキングは、歩幅やスピードなどの歩き方のみならず、時間帯、食前か食後かなど、さまざまな面を考慮する必要があります。体と心に効果的な正しいウォーキングの方法とは? 抗加齢医学研究のトップランナーとして知られ、『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』の著者である伊賀瀬道也氏に、その極意を聞きました。

※本記事は伊賀瀬道也著の書籍『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。


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※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

ウォーキングをする時間帯はいつがいい?

まず前提として、ウォーキングは、しないより、したほうがいいことは当たり前です。

では、歩く時間帯は何時にすればいいでしょうか。金鉉基(キム・ヒョンギ)氏らの研究によると、朝よりも体温が高い夕方に歩くほうが運動効果がより大きいようです。

この研究では、適度な運動(最大酸素摂取量の60パーセント程度の運動)を9〜11時のあいだに行う群と、16〜18時のあいだに行う群とを比較すると、連続血糖モニターでは夕方歩くほうが1日を通して低いという結果が得られています。

また、この研究では、冠動脈疾患の危険因子の一つである中性脂肪と、善玉コレステロールの比率もみています。

その結果、夕方に運動したほうが、この比率も低いことがわかりました。

高齢者は食前は血栓ができやすく、食後は転倒しやすい

次に、食前か、食後かという問題です。これは個人の体の状態によって選択していただければと思います。

まず、食後の運動が適しているタイプですが、これは糖尿病あるいは糖尿病予備軍の人です。とくに、1日で血糖値が最も上がりやすい朝食後に運動すれば、「食後高血糖」を改善できます。

たとえば、朝食を食べたあとの通勤や通学で、おおむね30分〜1時間程度歩くのがおすすめです。家事をしている人の場合は、朝食後の後片づけ、掃除、洗濯などで体を動かすといいでしょう。

次に、食前の運動が適しているタイプですが、糖尿病の心配のない健康な人で、おもに脂肪を減らすダイエット目的の場合におすすめします。食前の空腹状態で運動をすると、脂肪を使いやすくなるからです。

一方、食後は、血糖値が高い状態になっています。この状態で運動をすると、手っ取り早く血糖(グルコース)からエネルギーを得ようとして脂肪を使いにくくなるため、ダイエット効果が少なくなります。

ただ、高齢者の場合は、とくに注意してほしいことがあります。

食前の運動ですと、早朝は自律神経の不安定さから血圧が不安定だったり、血液が固まりやすかったりして、血栓ができやすいことが心配です。

一方、食後の運動の場合には、消化のために胃腸への血流が増えて「食後低血圧」という状態が起こりやすく、しばしば意識消失や転倒の原因になります。

そこで、高齢者がどうしても、朝、ウォーキングをしたいという場合は、朝食前なら「起床後1時間程度」たってから、朝食後なら「食後1時間程度」たってから行うのが無難です。

夕方にウォーキングを行う場合には、夕食前であれば問題ありません。食後に行う場合には、食後低血圧に気をつける意味で、夕食後1時間程度たってからウォーキングを始めるようにしましょう。

 

伊賀瀬 道也
愛媛大学大学院抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長。1964 年、愛媛県生まれ。1991年、愛媛大学医学部卒業後に第二内科(循環器)に入局。米国Wake Forest 大学・高血圧血管病センター(リサーチフェロー)、愛媛大学大学院老年神経総合診療内科特任教授などを経て2019 年4月より現職。約4000 人のドック受診者に指導を続けており、抗加齢医学研究のトップランナーとして知られる。『長生き1分片足立ち』(文響社)、『1分ゆるジャンプ・ダイエット』(冬樹舎)などの著書のほか、「NHKスペシャル」(NHK)などメディア出演も多数。

※本記事は伊賀瀬 道也著の書籍『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

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