「脚の付け根」が痛くなったら要注意。「変形性股関節症」予防の運動と生活習慣【専門医の大嶋浩文先生】

変形性股関節症は、股関節に強い圧力がかかり軟骨が摩耗し骨が変形する病気です。脚の付け根の痛みや違和感、歩行困難などが見られ、日常生活にも影響を及ぼします。今回は日本人工関節学会認定医の大嶋浩文先生にお話を伺いました。

この記事は月刊誌『毎日が発見』2024年3月号に掲載の情報です。

【前回】痛みで歩行が困難に...。注意すべき「変形性股関節症」について医師の大嶋浩文先生が解説

予防するための運動と生活習慣

太ももの筋肉を鍛える
股関節を支える筋力を増やし、股関節を柔らかくする運動を行いましょう。太ももの前側にある大腿四頭筋を鍛えて股関節を曲げやすく、歩行しやすくする運動や、腰の横の筋肉を鍛えて、股関節の動きをスムーズにする運動を。

<ひざの曲げ伸ばし運動>
(1)床にあおむけになって両足をつけ、ひざは直角になるように曲げます。

「脚の付け根」が痛くなったら要注意。「変形性股関節症」予防の運動と生活習慣【専門医の大嶋浩文先生】 2403_P072-073_03.jpg(2)片側のひざを伸ばし、ゆっくり上げられるところまで上げ、7~8秒止めてからゆっくり元に戻します。反対側の脚も同じように。左右各10回程度を1セットとし、1日3セット。

「脚の付け根」が痛くなったら要注意。「変形性股関節症」予防の運動と生活習慣【専門医の大嶋浩文先生】 2403_P072-073_04.jpg

<開脚運動>
(1)横向きに寝て上体を少し起こし、左のひざを曲げます。
(2)右脚を上にゆっくり30度ぐらい上げ、3秒止めて下ろします。
(3)逆の脚も行います。1日各10回ずつ。

「脚の付け根」が痛くなったら要注意。「変形性股関節症」予防の運動と生活習慣【専門医の大嶋浩文先生】 2403_P072-073_05.jpg上半身に負荷をかけない
上半身からの負荷を減らすため、肥満予防のほか、重い荷物は直接持たず、カートなどの活用を。コンクリートなど硬い地面でのウォーキング、ヒールでの長時間の歩行も避けて。

「脚の付け根」が痛くなったら要注意。「変形性股関節症」予防の運動と生活習慣【専門医の大嶋浩文先生】 2403_P072-073_06.jpg

主な治療法

薬物療法
痛みが強い場合は、消炎鎮痛薬などで股関節の炎症を抑え、痛みを軽減します。内服薬が一般的で、座薬や、まれに注射を行うこともありますが、変形した骨は元には戻りません。

関節鏡手術
股関節周辺に1cm程度の穴を3カ所開け、関節鏡を用いて破損した軟骨の一部などを取り除き、痛みを軽減します。ただし、骨の変形を止めることは難しく、再発することもあります。

骨切り術
股関節の骨を切り取って整形し、股関節の正常な動きを取り戻す手術。適用されるのは、骨の再生能力が維持されている40代まで。高齢者は人工関節置換術(下記)が適用されます。

人工関節置換術
大腿骨頭と、その受け皿となる寛骨臼を人工物(人工関節)に置き換える手術。人工物は30年以上の耐久性を期待できるものもあり、再手術不要の治療法となっています。

<達人のツボ>
ロボットが行う最新の手術法

近年、人工関節置換術に多く取り入れられているのが、ロボティックアーム支援手術システム「Mako(メイコー)システム」。ロボティックアーム(医師を助ける機械の腕)を医師が操作しながら、人工関節に置き換える方法です。事前にプログラムされた高度なナビゲーション(案内)システムにより、1mm単位で正確に骨を切除し、人工関節を取り付けられます。
このため、術後は不具合を起こしにくく、1~2週間で退院可能。回復も早く、スポーツなども再開できます。保険適用ですが、手術計画から施術までに数カ月かかるので、よく確認を。

「脚の付け根」が痛くなったら要注意。「変形性股関節症」予防の運動と生活習慣【専門医の大嶋浩文先生】 2403_P072-073_01.jpg「脚の付け根」が痛くなったら要注意。「変形性股関節症」予防の運動と生活習慣【専門医の大嶋浩文先生】 2403_P072-073_02.jpg構成/岡田知子(BLOOM) 取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

NTT 東日本関東病院  人工関節センター  センター長
大嶋浩文(おおしま・ひろふみ)先生

2004年、弘前大学医学部卒。JR東京総合病院や東京大学医学部附属病院などを経て18年より現職。日本人工関節学会認定医、ロボティックアーム支援人工股関節置換術指導者などの資格を有し、数多くの治療を行う。

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