『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』 (伊賀瀬道也/PHP研究所)第2回【全2回】
健康と若さの維持のためにウォーキングを始めてみよう、習慣にしてみようと思う人が増えています。しかし、ただ歩けばいいと安易に考えていると、かえって健康を損なったり、長続きしなかったりすることも。効果的かつ継続可能な正しいウォーキングのやり方を、ぜひとも知っておきたいものです。抗加齢医学研究のトップランナーとして知られ、『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』の著者である伊賀瀬道也氏に、大切なポイントを聞いてみました。
※本記事は伊賀瀬道也著の書籍『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。
前かがみの姿勢は腰痛やひざ痛を招く
まず、歩く前に、鏡やスマートフォンで写真を撮るなどして、自分の姿勢をみてみましょう。
たとえば、前かがみになって、うつむきがちに歩いているとしたら、せっかくウォーキングをがんばっても意味がありません。首や腰に負担がかかり、首のこりや腰痛を招いてしまい、最後はひざまで痛めて継続がむずかしくなるかもしれません。
逆に、腰を反りすぎて歩く場合にも、腰を支える腹筋をあまり使わないため疲れやすく、腰に負担がかかって腰痛になりやすくなります。
一般には、壁に背中をつけ、頭も壁につけてまっすぐ立った場合に、背中にこぶし1個程度の隙間ができるのが理想的とされます。
最近はだいぶ少なくなりましたが、私が小学生のころには、高齢女性が腰を曲げて前かがみになって歩いている姿をよく目にしました。当時、学校の先生にその理由を聞いたことがあります。
すると、「あのおばあちゃんの腰が曲がっているのは、一生懸命、畑仕事をしたからなのよ」と説明されました。
一生懸命、畑仕事をしたということに関しては、否定するものではありません。
じつは、このような状態になる女性の多くが、「老人性脊柱後弯(こうわん)症」(脊椎が異常に曲がって猫背になっている状態)といって、多くは閉経後、骨粗鬆症になって圧迫骨折をしたために、背骨が後ろに大きく曲がった状態になっているのです。
「円背(えんぱい)」あるいは「亀背(きはい)」などと呼ばれ、ひどい場合には痛みをともなうこともあります。あまりにひどいと、嚥下(えんげ)障害(のみこみの悪さ)や呼吸不全が出たりして、死にいたる可能性があります。
前かがみになっていたら背筋を鍛えよう
先日、高齢者の脊柱後弯症の研究で有名な秋田大学整形外科の宮腰尚久先生の講演をお聞きする機会がありました。
宮腰先生の研究によると、高齢者の脊柱後弯症の原因には、骨粗鬆症性の椎体(胸骨)骨折に加えて、背筋力の低下もあるそうです。これを予防するには、運動療法による背筋力の維持・強化が必要とのことでした。
背筋力が低下して、脊柱後弯が増強すると、椎体の前のほうに負担が集中することにより骨折が生じやすくなります。
そこで、適度な背筋運動により、脊柱後弯の増強を防ぐことで椎体骨折の抑制につながると考えられています。
これを予防する方法を紹介しましょう。
具体的には、うつぶせになって、お腹の下に枕を入れて体幹を持ち上げ、5秒間維持する動作(等尺性背筋運動といいます)を1日10回、週に5回行うようにします。
宮腰先生の研究では、4カ月ほどがんばれば、明らかに背筋力が増強し、生活の質も改善するそうです。
みなさんも歩く前に姿勢をチェックして、もし前かがみになっていたら、無理のない範囲で背筋を鍛えるようにしましょう。