ウォーキングをやみくもに始めてもかえって不健康に!? 高齢者、糖尿病の人の注意点

まずは「ニコニコ歩き」から始めよう

「どんな方法でも、歩けばいいんでしょう」と言う方がいますが、あまりにまちがった方法でウォーキングをすると、逆に足腰に余分な負担をかけることになり、長続きしない場合があります。正しいウォーキングをしてこそ、気分がすっきりするのです。そこで、私が提唱している「ニコニコ歩き」をお教えしましょう。

①肩の力を抜いて、背筋を伸ばし、胸を張ります。
②あごを軽く引いて、目線はやや遠くをみるようにします。
②ひじを軽く曲げ、前後に大きく、ゆっくり振ります。
③腰の高さは、上下、前後、左右にぶれないように、一定に保つよう心がけましょう。
③足全体を地面につけて、ひざを伸ばし、つま先で地面を蹴り出すように歩き、かかとから着地します。

歩幅はなるべく広くとることがおすすめですが、あまり無理をしても姿勢が乱れます。おおまかな目安は、「身長―100センチメートル」くらいです。1日1回30分以上で、週3日以上を目標に続けてみてください。

大事なのは、息がはずんでもニコニコしながら楽しく歩けることです。あまり神経質に考える必要はありません。自分にあった方法で長続きさせることが最も大切です。

「ニコニコ歩き」を毎日の習慣にしよう

私が提唱するニコニコ歩きは、科学的には最大酸素摂取量を目安にします。

最大酸素摂取量を測定するには、直接法と間接法があります。

直接法は、自転車エルゴメーター(自転車こぎ運動をすることで評価をする器具)やトレッドミル(ベルトに乗って歩いたり走ったりする装置)などを使い、最大のパワーで運動して呼気ガスを収集します。それを分析し、1分間に体内に取り込まれる酸素の最大摂取量(VO2max、ブイオーツーマックス)を算出します。

男性30歳の平均値は体重あたりで40ml/kg/分程度ですが、エリート長距離選手では90ml/kg/分にも達するといわれます。

一方、間接法は、心拍数や運動負荷などから簡単に最大酸素摂取量を推定します。ニコニコ歩きの運動ペースは、心拍数や血圧が危険なほど上昇せず、疲労物質である乳酸もほとんど蓄積しない運動強度です。

これを間接法で評価すると、最大酸素摂取量の50パーセントに相当する運動強度になります。

ニコニコ歩きの運動ペースの計算式は、心拍数(脈拍数)で推定することができ、「138-(年齢÷2)=拍/分」になります。たとえば、50歳の人であれば、「138-(50÷2)=113拍/分」となります。ざっくりいえば、ニコニコ歩きは、息ははずむけれど会話ができる程度といえます。心拍数(脈拍数)は個人差がありますので、あまり気にする必要はありません。ぜひ試してみてください。

一つ補足すると、ニコニコ歩きを習慣化しても、やめるとすみやかに元にもどるというデータを発表されている先生もいます。"継続は力なり"ですね。

 

伊賀瀬 道也
愛媛大学大学院抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長。1964 年、愛媛県生まれ。1991年、愛媛大学医学部卒業後に第二内科(循環器)に入局。米国Wake Forest 大学・高血圧血管病センター(リサーチフェロー)、愛媛大学大学院老年神経総合診療内科特任教授などを経て2019 年4月より現職。約4000 人のドック受診者に指導を続けており、抗加齢医学研究のトップランナーとして知られる。『長生き1分片足立ち』(文響社)、『1分ゆるジャンプ・ダイエット』(冬樹舎)などの著書のほか、「NHKスペシャル」(NHK)などメディア出演も多数。

※本記事は伊賀瀬 道也著の書籍『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP