ウォーキングをやみくもに始めてもかえって不健康に!? 高齢者、糖尿病の人の注意点

「俳句ウォーキング」で認知機能を維持する

私は、認知機能を維持するためには、何かをしながらウォーキングをすることがいいと考えています。一般的に「デュアルタスク」といわれる方法で、認知機能の維持によいといわれているものです。

私が住んでいる愛媛県松山市は、母校の前身でもある旧制松山中学から正岡子規、中村草田男(くさたお)らをはじめとして、名だたる俳人を輩出した"俳句の町"でもあります。

俳句は「5文字・7文字・5文字(5・7・5)」でつくられ、季語をふくむ短い言葉を紡ぎながら奥深い世界を表現できる日本ならではの定型詩です。

以前、松山市で行われた研究では、俳句を詠む作業は、俳句の黙読や簡単な計算より、脳の前頭前野の血流が促進されることが確かめられています。

前頭葉は、脳の前方に位置し、短時間だけ情報を保持し、同時に処理する能力であるワーキングメモリーに関与しています。

とくに人間では、前頭葉の前頭前野という場所が非常に発達していて、そのため、「人間が人間らしく」あることができるといわれています。

俳句を詠むことで前頭前野が活性化されると、頭の回転がよくなり、日常生活すべてに前向きの影響をおよぼすことにつながっていくのです。

ウォーキングと俳句とのダブル効果

アメリカの臨床研究では、週3回のウォーキングをする人は、脳の記憶中枢である海馬の体積が2パーセント以上増加し、記憶力の改善もみられたと報告されています。

また、別の研究では、週3回のウォーキングで認知機能のリスクが33パーセントも下がったという報告もあります。

そこで、ウォーキングと俳句とのダブル効果によって、認知機能の改善が期待できるのが「俳句ウォーキング」です。

私は以前、松山市で15〜55歳の男女12人(男女比不明)の参加者に市内の句碑をめぐる「アンチエイジング俳句ウォーキング」を実践してもらい、非常に好評を博しました。

みなさんもウォーキングをしながら、一句ひねってみてはどうでしょう。

 

伊賀瀬 道也
愛媛大学大学院抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長。1964 年、愛媛県生まれ。1991年、愛媛大学医学部卒業後に第二内科(循環器)に入局。米国Wake Forest 大学・高血圧血管病センター(リサーチフェロー)、愛媛大学大学院老年神経総合診療内科特任教授などを経て2019 年4月より現職。約4000 人のドック受診者に指導を続けており、抗加齢医学研究のトップランナーとして知られる。『長生き1分片足立ち』(文響社)、『1分ゆるジャンプ・ダイエット』(冬樹舎)などの著書のほか、「NHKスペシャル」(NHK)などメディア出演も多数。

※本記事は伊賀瀬 道也著の書籍『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

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