「咳が1週間くらい長引いても自然に治るのを待つ」というあなた。放置していると全身に悪影響を及ぼすかもしれません。毎月2000人以上の患者を治療してきた呼吸器の名医・杉原徳彦先生は、実は悪さをしているのは「のどではなく鼻の奥」と言います。そこで、杉原先生の新刊『つらいせきが続いたら鼻の炎症を治しなさい』(あさ出版)から、「長引く咳」の正体から治療法までを連載形式でお届けします。
鼻の治療以外の、さまざまな咳の治療法
前回紹介したBスポット療法のほかにも、咳を治療する方法にはさまざまなものがあります。ここでは主に、注射による治療法をご紹介します。
前回の「痛みや出血もあるが・・・ぜんそくに高い効果「Bスポット療法」とは」はこちら
(1)ヒスタグロビン注射(保険適応)
体質改善として、花粉症によるアレルギー性鼻炎の治療でしばしば用いられる「ヒスタグロビン注射」も、ぜんそく(気管支と咳)に効果があるといわれています。
ヒスタグロビン注射には、アレルギー反応の際に放出されるヒスタミンへの抗体をつくり、その放出を抑える効果があります。その結果、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状をやわらげることができます。
ぜんそくの治療に用いる場合は、週1~2回のペースで6回注射したあとは、3~4カ月に1回のペースで注射を続けることになります(花粉のシーズンの前に、週1回ペースで、4~6回注射するのが一般的です)。
(2)金コロイド療法(自由診療)
また、人体の免疫力を高めて治す方法には、「金コロイド療法」があります。これは、当院の初代理事長である私の祖父、杉原仁彦が始め、世界的に広めた治療法です。
当時、金を材料とする金製剤は結核治療に用いられていましたが、祖父は重症ぜんそくをもつ結核患者さんに投与すると効果があることに目をつけ、気管支ぜんそくにも用いるようになりました。
金製剤は気管支ぜんそくに有効で、当院のこれまでのデータを見ても、完治率は約5割、有効率は9割近くになっています。高い効果が期待できるのですが、1~1年半の間、毎週注射を受ける必要がある点で、ややハードルが高い治療といえるかもしれません。
ただ、興味をもたれる患者さんには、おすすめしています。
(3)プラセンタ注射(自由診療)
美容目的の注射として知られる「プラセンタ注射」も、じつは咳ぜんそくや気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎などの、アレルギー疾患の治療にとても効果があります。
プラセンタとは胎盤のことで、注射には人間の胎盤から抽出したエキス(プラセンタエキス)を用います。
気管支ぜんそくの通常の治療と並行してプラセンタ注射を受けることで、症状が改善し、処方される薬の量が減っていったり、肺機能がよくなったりという報告をしばしば聞きます。
鼻に疾患のある患者さんで、美容目的でプラセンタ注射を定期的に受けられている方から、「今年の花粉症が楽になった」という感想を聞いたこともあります。
「胎盤埋没療法(たいばんまいぼつりょうほう)」という、皮膚を切ってそこに胎盤を埋め込む方法が、古くから気管支ぜんそくの治療に用いられており、その効果は知られていました。
なお、この治療を受けた方には、献血をしないようにお伝えしています。これはヒトの胎盤が原料となっているため、未知のウイルスが存在した場合のことを考えて100%大丈夫という証明ができない、という理由からです。
薬害エイズや薬害肝炎などが以前から問題になっていますが、これらは治療に使った製剤が非加熱だったことが原因です。この治療で用いるプラセンタは製造過程で熱処理をしているため、問題はないと考えています。
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4章にわたり、長引く咳の原因と対策を網羅。咳対策用の枕、マスク、お茶の選び方などセルフケアの実践方法も紹介されています