いびきの音量は「工事現場」レベル! 脳内科医が解説する、眠りの質を落とす「ありがちな現象」

睡眠薬のせいで夢遊病のようになることも

しかも、ある種の睡眠薬は劇薬といってもいいほどの強いインパクトを体にもたらします。眠れないさまざまな原因を無視させるほど、一時的に体を麻痺させる物質です。

たとえば、長く他院に通いながらいっこうに不眠症状が改善しない患者さんが来られました。「なぜだろう」といろいろ考え、話を聞いていると、他院で処方されていたベンゾジアゼピン系の「サイレース(フルニトラゼパム)」という睡眠薬を長期にわたって飲んでいることがわかりました。

これは筋弛緩作用もある手術などの麻酔の準備に使われる薬で、簡単にいってしまえば、一時的に意識を失わせる薬剤ともいえます。患者さんの話を聞くと、サイレースを飲むと眠れるけれど、夜中に無意識に起きて行動し、その記憶がまったくないといいます。たとえば次のような行動を繰り返すことが、複数臨床報告されています。

・夜中に起きて冷蔵庫の中のものを尋常じゃないくらい食べて、目が覚めたら冷蔵庫の前にいた。
・外出してコンビニで飲料水を買ったのを財布のレシートを見て知った。

薬のせいで夢遊病のような症状が引き起こされる、自分が自分でなくなってしまうという状態です。

また、睡眠薬の中には国によって麻薬の一種に分類されるものがあります。日本で医師から処方される睡眠薬の約65%を占めるベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

この薬は、副作用が少ない便利な薬とされていますが、耐性ができることで用量が増えたり、依存などによってやめることが難しくなったりする問題があります。さらに長期の連続使用で認知障害や不安、抑うつ症状など、心身の不調をもたらします。睡眠薬によって、うつ病が引き起こされる危険もあります。

寝られない症状には必ず原因が存在しています。その原因を取り除けば睡眠薬は必要なくなります。原因を探ることもなく処方された睡眠薬を飲んで「眠れて良かった」と思っていたら、睡眠障害がさらに悪化して、うつや認知症のリスクが高まってしまうだけです。

 

加藤俊徳(かとう・としのり)
神奈川歯科大学大学院統合医療学講座特任教授
総合内科専門医・医学博士

新潟県生まれ。脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。 株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後、帰国後、慶應義塾大学、東京大学などで脳研究に従事し、「脳の学校」を創業。

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※本記事は加藤俊徳著の書籍『中高年が朝までぐっすり眠れる方法』(アチーブメント出版)から一部抜粋・編集しました。

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