目覚めがスッキリしないのは年のせい? 「不眠症」セルフチェックと「不眠」4つのタイプ

ウトウトしたのに、夜中に目が覚めて、朝までぐっすりと眠れない。そんな不眠の改善を年のせいだからとあきらめてはいませんか? 睡眠の量と質が低下すると、日常生活に支障が生じるケースが目立つようになります。そこで今回は、杏林大学 名誉教授の古賀良彦(こが・よしひこ)先生に「睡眠と不眠症」についてお聞きしました。

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ご存じですか? 「不眠症」

1.長期間にわたり夜間の不眠が続く

2.日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する

この2つが認められたとき不眠症と診断されます。

1カ月以上にわたって不眠症が続き、身体活動に異変が生じた場合に病気として診断されます。

【セルフチェック】

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(編集部作成)

1つでも当てはまるものがあったら、専門医を受診して相談してみましょう。

加齢とともに乱れやすい睡眠&生体リズム

気候が涼しくなって熱帯夜から解放されても、なぜか眠れないという人がいます。

寝つきが悪いのでスマートフォンを操作しているうちに目が冴え、ますます眠れなくなってしまうこともあるでしょう。

ようやくウトウトしたのに、夜中に目が覚めて、朝までぐっすりと眠れない人もいます。

熟睡できないので朝起きたときにつらく、日中に眠気を感じることも珍しくありません。

そんな不眠は、年齢を重ねるうちに生じやすくなります。

「加齢とともに睡眠の量と質が低下し、『よく眠れない』『朝起きたときに疲れが取れない』『日中だるい』など、日常生活に支障が生じるケースが目立つようになります」と、古賀良彦先生は話します。

睡眠の量は、睡眠時間の長さです。

厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によれば、6時間未満の人の割合は男女ともに約4割になっていました。

特に、男性の30~50代、女性の40~50代は4割を超えていました。

仕事や家事、育児などを理由に挙げる人が多かったのですが、60代以降は、睡眠確保の妨げとして「特に困っていることはない」と回答した人の割合が5割を超えていました。

理由もなく眠れない。

その原因の一つとして考えられるのが、睡眠の「質」の低下です。

「睡眠は、深い眠りのノンレム睡眠(脳が休む眠り)と、浅い眠りのレム睡眠(脳は覚醒し体が休む眠り)を繰り返すことで、『質』が向上する仕組みがあります。加齢に伴い、ノンレム睡眠が浅くなりレム睡眠の数が減ることで、寝つきにくく中途覚醒しやすいため、ぐっすり眠った気がしなくなるのです」と古賀先生は説明します。

寝入った直後は、ノンレム睡眠の最も深い眠りになり、その後、浅い眠りのレム睡眠が生じ、次にまたノンレム睡眠・レム睡眠のリズムを繰り返します。

加齢とともに、最も深い眠りのノンレム睡眠が浅くなり、レム睡眠の回数も減ってしまうのです。


ノンレム睡眠とレム睡眠

睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠の2種類があります。

ノンレム睡眠は脳を休ませ、レム睡眠は体を休ませます。

寝入った直後は深い眠りのノンレム睡眠になるのが健康な状態です。

このとき、体のメンテナンスに役立つ成長ホルモンや健康に役立つホルモンが分泌されます。

ノンレム睡眠の後にレム睡眠の状態へ移り、体は休んでいますが脳は覚醒し、日中の学習や記憶の整理を行います。

この2つの睡眠を正しく繰り返すことが重要になるのです。

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「睡眠リズムが崩れると生体リズムも崩れます。朝起きて日中は活動的に動き、夜寝るというリズムが乱れ、夜の寝つきがさらに悪くなってしまうのです」と古賀先生。

睡眠リズムが乱れた状態で朝起きると倦怠感をひきずり、日中もウトウトしがちです。

生体リズムも乱れ、睡眠に関わるホルモンも分泌されにくくなって悪循環に陥るのです。

「入眠障害や夜間の中途覚醒には、うつ病などの病気が関与することもあります。睡眠障害を診断する医療機関を受診しましょう」と古賀先生。

「不眠」は主に4つのタイプに分類されます

(1)入眠障害
布団に入って眠ろうとしても、2時間以上寝つけない状態です。不眠症の中で寝つきが悪い症状は最も多いとされます。

(2)中途覚醒
夜中に2回以上目が覚めます。眠りが浅いためにちょっとした物音でも起きてしまいます。うつ病の症状のことも。

(3)早朝覚醒
6時起床のはずが明け方4時に起きてしまうといったケースです。通常より2時間以上早く目が覚めてしまう状態です。

(4)熟眠障害
睡眠時間は7時間を確保しているはずなのに、朝起きたときに「ぐっすり寝た」という感じが得られません。

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

<教えてくれた人>

杏林大学 名誉教授 
古賀良彦(こが・よしひこ)先生

1971年慶應義塾大学医学部卒。医学博士。99年杏林大学医学部精神神経科学教室主任教授、2016年杏林大学名誉教授。睡眠障害やうつ病などの診断・治療・研究多数。

この記事は『毎日が発見』2021年10月号に掲載の情報です。

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