なんだかやる気が出ない...そんな日々を送っているのなら、「脳のどこかに未発達の脳番地があるかもしれない」と、脳内科医・加藤俊徳さんはいいます。「脳番地」とは、加藤医師が考案した脳の各部位を機能ごとに名付けたもの。今回は、著書『ぐうたらな自分を変える教科書 やる気が出る脳』(すばる舎)から、日常生活に関係する8つの脳番地を鍛えるコツを連載形式でお届けします。
経験とは「見る」ことだ
やる気に乏しい人と活動的な人の脳で、差がつきやすいのが「視覚系脳番地」です。
視覚系脳番地とは見る力です。
経験とは見ることと言っても過言ではありません。
私たちのインプットの中心は、「見る」と「聞く」というふたつの経験です。
見たことと聞いたことを、どれくらい言葉で説明できるかで、その人のインプットの質がわかります。
そのうち「聞く」というのは言葉や音楽などです。
言葉にするといっても、すでに音声化されている情報は、聞こえたままを再生することができるため、非言語から言語への情報の変換は起こりません。
一方、文字ではない映像を「見る」場合は、見た状況を言葉で説明する際に言語に変換することが必要です。
「空気が読めない」原因とは?
経験を言語化するとインプットの質がわかるというのは、同じものを見たとしても、常に同じ情報がインプットされるわけではないからです。
どれだけつぶさに見ているか、どれくらいの範囲を見ているのか、どこに注目しているのかで、その人の経験は変化します(主に、右脳の視覚系で自分を含めた周りの様子を把握し、左脳の視覚系で文字を読み取ります)。
視覚系脳番地が発達している人は、状況を的確に把握できていることが多いです。
ですから、周りに配慮したり、適切な行動をとることができるのです。
逆に、視覚系脳番地の感受性が弱い人は、周りがよく見えておらず、場違いな発言や行動が多くなります。
視覚情報のインプットがあやふやになりやすく、言葉で表現しやすいイメージへ、実際に見ている現場の様子をゆがめてしまいます。
いわゆる「空気が読めない」タイプの多くは、視覚系の経験値が低いために起こっているのです(この「空気を読む」には、直接見たものを、理解系脳番地や感情系脳番地を使って読み解く能力も必要になってきます)。
「見る力」が強いほど思考がクリアになる
視覚系脳番地のインプットの質を上げるには、主体的にその場に関わっていくことが必要です。
ぼんやりしがちな人は「よく見る」ことを意識しましょう。
たとえば、ここにひとりの女性がいるとします。
やる気不足の人に、見えたものを説明してくださいと言うと、「女性がひとりいます。えーと、髪が長いです。えーと......」という感じで言葉が出てきません。
活動的な人は、「髪が黒く肩くらいまでの長さの、40代の女性がひとりいます。痩せ型で黄色いシャツを着ています。無表情で何かメモをしています。口の両端に細いしわがあります」......というように、どんどん情報が出てきます。
「見る力」をつけるには、日頃から、経験したことを言語化する訓練を行うことです。
言葉にするという前提があれば、真剣に周りを見るようになります。
それだけで、脳がエネルギッシュに働きます。
【視覚系を鍛えるトレーニング】
1日1枚、 いい写真を撮る
「いい写真」というのは漠然とした言い方ですが、自分で見て「よくできている」とか「気に入った」と思えるものであればどんな写真でもいいのです。
いい写真を撮ろうと心がけて過ごすと、目の前に起こる光景を、集中してよく観察するようになります。
この心がけが習慣づけば、自ずと脳の見る力が強化されます。
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みるみる気力がわいてくる日常生活のコツなど、脳とやる気の科学が全6章にわたって解説されています