保有者の8割は無症状ながら、発症すると耐えられない激痛が襲うという「胆石」。今回はこの「突然の激痛リスク」を減らすために、胆石の基礎知識や、発見、治療方法などを、日本赤十字社医療センター消化器内科副部長 の伊藤由紀子先生に伺いました。
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リスクの一因は脂質異常症。遺伝的要因も
胆石と一言で言っても、結晶化する成分によって「コレステロール結石」「ビリルビン結石」「黒色石」の3種類があります。中でも、日頃の食生活と関係が深いと考えられるのはコレステロール結石です。肝臓で作られる胆汁の成分にコレステロールが多く含まれ、胆のうの働きが悪いとコレステロール結石が生じやすくなるのです。
「肝臓で産出された胆汁はいったん胆のうにためられ濃縮されます。そして脂肪分の多い食事をしたときに胆汁を出すしくみがあります。脂質異常症などで胆汁の成分にコレステロールが多く含まれ、胆のうが収縮して胆汁を出す収縮機能が低下していると、胆のうの中の胆汁でコレステロール結石が作られやすくなるのです」と伊藤先生。
悪玉(LDL)コレステロール値や中性脂肪が高いと、胆のうの収縮機能は低下しやすくなります。また、ダイエットで食事を抜く、あるいは、脳卒中などの治療後に食事ができない人も、胆のうの収縮機能は下がり、胆のう内にたまった胆汁により結石が生じやすくなるのです。
「脂質異常症などの生活習慣病を抱えている人は、胆石のリスクは高くなりますが、近年、遺伝的な素因も分かってきました。親族に胆石症の人がいる場合は発症するリスクが高いのです。脂肪分の多い偏った食事は避けて、運動習慣を身に付けるようにしましょう」と伊藤先生。
胆石予防の基本は、生活習慣病予防と同じでバランスの良い食事と運動。そして症状が出てしまったら病院へ行きましょう。
【胆のう結石ができるしくみを解説!】
胆汁をためる胆のうの中で、胆汁の成分が結晶化して胆石になります。結晶化する成分により胆石は3種類に分類されます。
3種類の胆石を知ろう
●肝内結石
肝臓の中にできる結石。非常に少なく胆石の1%ほど。
●胆のう結石
胆のうの中にできる結石。胆のう内にとどまっている場合は症状が出ないことが多いが、胆のうの出口につかえると痛みなどが起こる。胆石の約80%がここにできる。
●総胆管結石
胆のうと十二指腸を結ぶ総胆管にできる。胆石の約20%を占める。総胆管を塞いでしまうこともある。その場合は急性胆管炎や急性膵炎が起こったり、それが重症化してしまうことも。
上記の3カ所に胆石が詰まって炎症が起こることで症状が出ます。細菌による感染症を伴うと敗血症で命に関わることもあります。
そもそも「胆のう」の働きって?
・肝臓で作られた胆汁をためる袋の役割。
・ナスのような形をしていて、大きさは長さ7~10cm、幅3~10cmほど。
・胆管(肝内胆管、総胆管など)によって、肝臓や十二指腸につながっている。
・ものを食べると胆のうが収縮して、胆汁を十二指腸に放出する。
・一時的に胆汁を貯蔵している間に胆汁内の水分や電解質を吸収し、濃い胆汁を作る。
・油脂の多い食事をしたり、生卵 (特に卵黄)を食べると、胆のうが収縮して胆汁を十二指腸に送り出して、油脂の分解を助ける。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史