アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。現在は夫婦二人と3ニャンとで暮らしています。今から20年以上前、私の嫁時代の体験を思い出しながら書いています。
前回の記事:姑の死...ついにその時が。親戚一同いわく「業の深い人だった」/かづ
姑の葬儀で葬儀場の宿泊ルームに泊まった舅。
そのリュックからはごっそりとウイスキーの小瓶やおつまみの小袋が出てきた。
それらを取り出し、「じいちゃん...。このピーナッツも、1袋50円なんやで。」と説明しながら、私の心の中は情けなさでいっぱいだった。
なんで、何でもタダだと思うかなぁ!
後で確認して、全部請求されるじゃねーか。
ただでさえ舅姑は互助会費を全額払いこんでいなかったので、清算時にはその残金も支払わねばならず、物入りな葬式なのだ。
なのに、なんでそんな無駄な物に4千円近くも払わなきゃなんないんだよと、呆れるやら情けないやら。
それも本来なら自分の妻の葬儀なので、落ち込んでいたり悲しんでいたりとするであろう状況で、ましてや喪主である立場にも関わらず、身体が不自由だからと息子に代行して貰っている状況を考えれば、もう少し他に考える事があるだろう。
夫は夫で「喪主代行で挨拶するんやけど、何言うたらエエのか全く解らん...」と、頭をかかえてる。
そうこうしている間も葬儀の時刻は近づいてくる。
夫はメモ用紙を前にペンを握ったまま、一文字も書いていない。
葬儀社の方からは入れ代わり立ち代わり、焼香順であったり弔電が届いただのとひっきりなしに声がかかる。
でも夫はそれどころじゃない。
私が右往左往している間、舅は椅子に座ったままで親戚たちと世間話をしていて、夫は控室のテーブルで頭を抱えたまま。
たまらなくなった私は夫からペンを取り上げ、サラサラと書いた。
「生前の母は、毎日をハツラツと活動し、社交ダンスに観劇会・旅行も大好きでした。うんぬんかんぬん・・・これでイイんじゃないの?」
告別式10分前になり、前日同様続々と参列者が来て下さる。
そして、これまた前日同様、親戚が誰も来ていない。
夫はオロオロオロオロ。
私は「昨日みたいに5分前には、来るんじゃないの?」と慌てもしない。
またもや私の弟夫婦が来て「また、誰も来て無いんか???」と言い、「姉ちゃんも、大変やな...」と言った。
聞くよりも実際に目で見た方が分かる。
告別式も終わりに近づき、お棺に花を入れる時になった。
親戚たちは口々に姑の顔をしげしげと見て、あまりの風貌の変わり様を指摘した。
「いや~、いつも綺麗にしてはったのに、髪の毛なんか真っ白やね~」
「いつ見てもバッチリとお化粧してたのに、見る影も無いわ。あないになるもんなんやね~」
「そりゃあ、なんて言うても70過ぎやもの。化粧も手入れもしてなかったら、そんなもんやで」
「相当してはったもんな~」
姑が元気な頃は、常時バッチリ化粧をしていた。
そして、親戚たちや友人知人、近所の方にまで「私くらい(綺麗にするには)美容にお金掛けるのは当たり前」と言っていたので、周りからは「アレだけ金掛けてりゃ、そりゃそうだろうよ」と陰口を言われていた。
なんせ姑は「高い基礎化粧品を使ったり、美容会に行ってお手入れをするのは女として当然。私くらいの歳になって、金が無いなんて才覚の無い女の証拠! これくらいの事は、み~んなしていらっしゃって当然ですわよね~、皆さん♪」と言ってはばからなかったので、相当嫌われていたが、本人は「今日も、羨望の眼差しで見られたわ♪」と、ご満悦だった。
(そうやって、着々と貯金を食い潰しちゃったんだけどね。)
姑の具合が悪くなったと聞いてから、親戚は姑とほとんど会っていなかったので、このお棺の中の姑を久しぶりに見る訳だ。
要するに、姑の兄と姉以外、誰も見舞いには来なかったのだ。
けれどもその姑の兄と姉も、別に見舞いに来てくれた訳ではなく、まだ記憶が残っていた時に、姑が「兄ちゃんや姉ちゃんに長い事会ってないから、心配しとると思う...」と言うので、私が数回頼み込んで姑を連れて行って会わせていたと言うだけだ。
誰も心配もしていないし、誰も会いたいなんて言って来なかった。
認知症を発症してから亡くなるまでの6年間、電話の1本も無かったのだから。
なので、姑の兄・姉ですら、認知症が本格的に進みだしてからの姑を見るのは初めてになる。
久しぶりにマジマジと見た姑は、それはそれは元気な頃と比べて別人だった事だろう。
最後にお花を入れる時、姑の顔を見た瞬間、私は泣いた。
誰からも、惜しまれもしていなかったから。
もしかしたら中には惜しんだ人がいたのかも知れない。
でも、誰も惜しむ言葉は発しなかった。
『お義母さん。貴女はみんなから愛され、みんなから尊敬され、みんなから憧れられていたと思っていたんですよね。でも実際は、見舞いにも来ない、電話1本して来ない。通夜にも告別式にも、一般の弔問客よりも遅れて来る親戚と、お義母さんが「私には友達がたくさんいるのよ」と言っていたにもかかわらず、連絡をしたら「友達じゃないから」と言って来てくれない方々。まだ、この式場にいますよね? どこからか見ていますでしょ? こんな筈じゃ無かったと思っていますか? もっとたくさんの方が駆け付けて、みんな泣いてくれると思っていましたか?』
そう思うと、涙があふれた。
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