<この体験記を書いた人>
ペンネーム:fennel
性別:女
年齢:55
プロフィール:地方在住の専業主婦。残りの人生、いかに生き抜くかを模索中です。
私は55歳の専業主婦。
80歳になる実母は、同じ市内で元気に一人暮らしをしています。
2020年7月のある日のことです。
「ちょっと作ったから取りに来て!」
突然母からLINEが来ました。
母は昔から料理が好きで、三度の食事はもちろんのこと、オーブンでケーキやピザを焼いては人に食べさせるのが好きなのです。
「また何かおいしくもない料理を押し付けられるのか...」
内心がっかりしながらも、一応安否確認も兼ねてしぶしぶ訪ねると「変わりご飯(炊き込みご飯や混ぜご飯などのこと)を炊いたから持っていって」とパック詰めされたご飯を大量に渡されました。
よく見ると、乾燥ワカメがところどころに見える程度で他の具は無く、味付けもほぼ無し。
想定の範囲内です。
他にも大根の煮つけがあったのですが、こちらは逆に甘過ぎて一口しか食べられませんでした。
私が子どもの頃からそうなのですが、母の料理はとにかく煮物だけは甘過ぎて、他のものはほとんど味が感じられないほど薄味なのです。
だから母の料理の印象は「甘い」か「薄い」だけ。
昔は砂糖が貴重品だったようで、砂糖を入れるのがよほど嬉しいのか、甘い味付けの料理は甘さ度合が半端ではありません。
幼稚園のお弁当に入っていた定番の卵焼きは、気持ちが悪くなるほど甘くて、本当に大嫌いでした。
一方で、しっかりとした味付けが求められる料理は味が薄過ぎてそっけないんです。
素材の味を生かすとか、健康を意識して薄味なのはとても良いことなのですが、それにつけても薄すぎて正直美味しくないし、何より食事が楽しくないのです。
せっかく作ってくれたのだからと、なんとか味を付け直してみたり、我慢して食べたりするのですが、それにも限界があり、結局処分することになってしまいます。
食材ももったいないし、母にも申し訳ないなと思います。
そしてしまいには、母には悪気はないのだし、こんなふうに思ってしまう私が悪いのかと自分を責めてしまい、気持ちが沈んでしまいます。
なんだか悲しくなって、子どもの頃は何の疑問も持たずに食べていたのだから、きっと美味しかった思い出の料理があるはずだと、必死で思い出してみました。
弁当のウィンナーソーセージとプチトマト、良く冷えたスイカ、生クリームいっぱいのケーキ屋さんの誕生日ケーキ、温かい湯豆腐...。
思い出すのは手料理ではないものばかりで、ますます落ち込んでしまいました。
そんなある日、母からまた「お稲荷さん作ったんだけど」とLINEが来ました。
正直、恐怖を感じたことは母には言えません。
またか!? この先また同じことが延々と続いては耐えられない!
そう思った私は母に正直に言おうと決心しました。
「お母さんの味付け、ちょっと口に合わないんだけど」
ケンカも覚悟して、恐る恐る切り出してみましたが...。
「あら! そお? ま、いいから持ってってー」
返ってきたのはそんな言葉でした。
まったく意に介していない母の返事に一瞬にして撃沈!
言い争う気力が失せてそれ以上言葉が出ませんでした。
私は決して嬉しそうになどしていないのに、それでも押し付けをやめようとしません。
もしかして「本当はありがたいくせに。今度はちゃんと好みの味付けにするわね」と、とてつもないポジティブ勘違いをしているからなのかもしれません。
ありがた迷惑で、単なる自己満足に過ぎないということを、傷つけずにどうやってわからせれば良いのか?
私の悩ましい日々はまだまだ続きそうです。
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