日本人は世界中で最も海藻を多く食べる民族として知られています。海藻は、アルギン酸やフコイダンなどの水溶性食物繊維が豊富です。その他、カリウム、ヨウ素(ヨード)、カルシウム、鉄なども豊富に含み、古来、日本人の貴重なミネラルの供給源となってきました。
海の野菜(Sea Vegetable)とも呼ばれ、いまでは低カロリーな健康食品として世界中から注目を集めています。
中でも、昆布は日本の食卓に欠かせない海藻。日本の昆布の生産量は約12万t。和食を下支えしてきたのは昆布のだしです。ほとんどが北海道で生産されており、採れる場所によって呼び名があり、用途も違います。
今回は、料理研究家で管理栄養士の村上祥子さんにその種類や栄養、簡単に作れる「酢昆布」について教えてもらいました。うま味たっぷりの昆布を毎日の食卓に取り入れてみませんか。
【昆布の種類】
●真(ま)昆布
津軽海峡~噴火湾沿岸で採れる道南産の昆布。だし昆布の代表です。取り扱い量は日本国内の90%に及びます。収穫後、1年から2年寝かせた方が、うま味成分(グルタミン酸)が増えるといわれています。
●羅臼昆布
真昆布と並ぶ昆布の最高級品。濃厚な味のため、「だしの王様」と称えられ、だし昆布として好まれます。知床半島の一部のみで採れます。
●利尻昆布
真昆布や羅臼昆布に次ぐ高級品で、生産地は利尻島、礼文島及び稚内沿岸。上質なだしを取るには、1年以上寝かせた「ひねもの」がよいとされています。
●日高昆布
日高地方沿岸が産地。繊維質が多いため早く煮え、非常に軟らかくなるので煮昆布として昆布巻き、つくだ煮、おでん種など、昆布そのものを食べる料理に適しています。市販品の煮昆布、早煮昆布は、一旦、乾燥日高昆布を水でもどし、蒸して乾燥させたものが多く、塩分も少なめなのが特徴です。
●がごめ昆布
函館市の津軽海峡~岩手県沿岸、樺太、朝鮮半島東北部など広範囲に生育します。昔は雑海藻とみなされ、とろろ昆布や納豆昆布などの加工品として用いられていましたが、水溶性食物繊維「フコイダン」が他の昆布よりも多量に含まれていることが分かり、ここ数年、価格が急騰しました。
【栄養】
昆布にはカルシウムやマグネシウム、カリウム、ヨウ素といったミネラルをはじめ、ビタミンや食物繊維も豊富です。また水溶性食物繊維であるアルギン酸とフコイダンは糖や塩分、コレステロールが吸収されるのを抑え、体外に排出する働きがあります。このため糖尿病や高血圧の予防の効果が期待できます。
昆布の表面についている白い粉は昆布のうま味成分で、そのまま使って大丈夫です。
【保存方法】
常温で直射日光が当たらず、湿気のない場所で保存します。
酢の酢酸と昆布のアルギン酸、フコイダンで高血圧予防効果は絶大!
「酢漬け昆布」を作ってみましょう
常温で1年間保存できます。
●酢漬け昆布
大さじ1あたり2kcal/塩分0.1g
●昆布酢
大さじ1あたり7kcal/塩分0.1g
【材料】(作りやすい分量)
昆布...30g
米酢...200ml(酢はりんご酢、黒酢など好みの酢でもよい)
【作り方】
1 昆布は3㎝長さの細切りにして瓶に入れる。
2 酢を注ぐ。
3 電子レンジ600W で30秒加熱。12時間後からおいしく食べられる。
●酢漬け昆布の健康効果
1 便秘解消
昆布のアルギン酸やフコイダンなど水溶性食物繊維と酢の効果で、ばっちりスルリ!
2 冷え性解消
酢のクエン酸回路を活性化する効果で血流を促進。末端までポカポカ、冷え性も解消!
3 コレステロール値が正常に
2週間ほど続けて摂ると、悪玉コレステロールが減少。善玉コレステロールを増やします。
4 高血圧の改善
料理に少量加えると、うま味成分のグルタミン酸と酢の効果で減塩でき、高血圧が改善!
取材・文/石井美佐 撮影/中野正景
次の記事「健康効果抜群!の「酢漬け昆布」を使った"ささっと"レシピ(2)」はこちら。
村上祥子(むらかみ・さちこ)さん
料理研究家・管理栄養士。1942年、福岡生まれ。公立大学法人福岡女子大学国際文理学部・食・健康学科客員教授。食材の持つ力で健康寿命の延伸を図る研究に関与する。同大学内の「村上祥子料理研究資料文庫」では50万点の資料が一般公開されている。