<この体験記を書いた人>
ペンネーム:真由美
性別:女
年齢:42
プロフィール:高校生の娘がいる主婦です。主人は美容室を経営しています。
美容師の主人は、娘の髪の毛を大切にケアしてきました。
それもあったのでしょう、娘の夢は「美容師」です。
高校を卒業してから美容専門学校に行くことを決めていましたが、現在高校生の娘は1年生のころから主人の店でアルバイトをしています。
もちろんお客様の髪に触れることはありませんが、フロントを担当したり、掃除や洗濯、接客をしながら主人の技術を盗み見ているようです。
主人がアルバイトとして正式に雇っているため、学校にも事情を話してアルバイトの許可をもらっています。
それがまさか「学校を巻き込んだ大ごと」になるとは夢にも思っていませんでした......。
経緯はこうです。
娘には親友がいます。
その親友の子の誕生日が近いことから、「お金をもらわない」という約束で主人に許可をもらい、娘がトリートメントをしてあげることになりました。
親友の子はたいそう喜んでくれたようで、娘が美容師になったら「行きつけにするからね」と言ってくれたそう。
ふたりで微笑みあっていた様子を、主人は嬉しそうに私に教えてくれました。
その親友の子は、学校で友達にそのことを話したそうです。
それを聞いた娘も「そんなに喜んでくれたんだ」と嬉しそうでした。
ところがある日、主人が落ち込んで仕事から帰ってきました。
そして、その日アルバイトがなかった娘にこんな話をしたんです。
主人の店に娘の友達という人が来店し、カットとトリートメントをしたのだそう。
そして、お会計の段階で、その娘の友達が一言「え? お金取るんですか?」と。
理由を聞くと、娘の親友の子は無料でやってもらったというのに、どうして私からはお金を取るの?ということでした。
主人は「娘の親友へのプレゼントとして、美容師である自分が担当したのではなく、娘がトリートメントだけをした」ということを伝えたそうです。
そして、「納得してくれたかはわからないけれど、とにかく支払いはしてもらったよ」ということでした。
それから、そういった「友人を名乗って無料のサービスを要求する人」が頻繁に来るようになり、主人は若いお客がくると「もしかして...?」と疑心暗鬼になってしまいました。
このままでは営業に差し障る、そう思っていた時、高校のPTA役員の会から我が家が呼び出しを受けました。
学校につくと、PTA専用会議室に、PTA役員のほか、校長までが同席しています。
急激な不安に襲われました。
そして言われたのは「あなたのお店では友達からもお金を取るのか!」。
開いた口が塞がらないとはこのことです。
慈善事業ではないこと、商売として営業をしているためお金を払ってもらわなければ施術はできないことを伝えました。
PTAの役員は「タダでやってもらった人もいるのに不公平ではないか」「子供たちが傷ついている」と糾弾をします。
私は主人と娘の名誉のために、いじわるでしているのではないことを何とか伝えようとしましたが、大人が大人に怒鳴られるという異常な室内で、ただ体が震え、声が出せなくなっていました。
ですが、「ああ、味方は誰もいないんだ...」と思った時です。
それまで黙っていた校長が口を開きました。
「いじめが行われたということで同席したが、こんな非常識な話は聞いたことがない」
そう、大きな声を出してくれました。
「商売をやっている人に対して無料を要求するのは、無給を強いるのと同じである」と。
あの時校長が同席してくれていて、本当に、本当に良かったと思います。
それから無茶な要求をする人は来店していませんが、「集団心理」の恐怖を目の当たりにしたできごとでした。
今でもあのPTA専用会議室に足を踏み入れた瞬間の空気と視線は忘れることができません。
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