<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:58
プロフィール:妻(56歳)と二人暮らしの58歳の地方公務員の男性です。長男(23歳)が就職して家を離れて1年余りが過ぎました。
「ん? 不在票か...あれ? あいつ、何送ってきたんだ?」
昨年の暮れ、ポストに届いた宅配の不在票に記された送り主の名は、確かに息子(23歳)のものでした。
もう夜遅かったので、翌日の再配達を依頼して待つことにしました。
「あなた誕生日近いからね、プレゼントじゃないの?」
帰ってきた妻(56歳)がからかうように言います。
「んな訳ないだろ、あの不肖の息子が」
実際、手がかかった記憶しかない子です。
小学校の頃は小児喘息で、宿泊行事の時は大きな吸入器を学校まで渡しに行きました。
中学校に入ると筋金入りの勉強嫌いで、「ねえ、高校って行かなくてもいいんだよね」が口癖でした。
それでも何とか高校に入ると、定期試験の度に追試を受けるありさまです。
出来の良い姉(現在25歳)に「何やってんの」とたしなめられると「同じ学費で2倍試験を受けてんだ、コスパよくねえ?」と言い返して家族を呆れさせました。
それでも何とか私立の大学に潜り込みましたが、今度はサークルで知ったサバゲー(サバイバルゲーム)にどっぷりとはまり込み、授業に行くよりフィールドに行く方が大事な様子。
「高い学費、もったいないだろう」
「俺さ、学費を最も効率的に使っている学生かもしれないぜ」
同じ学費でも、遊びも勉強も楽しんでいると言いたかったのでしょうか?
見事(?)にぎりぎりの単位数で卒業して見せました。
翌日届いた荷物を開けてみると椅子に乗せて腰を支えるタイプの座布団が入っていました。
「何だこりゃ?」
LINEで真意を尋ねてみました。
「届け物があったけど」
「こないだネットでたまたま見つけたの。気に入った?」
「何のつもりだ?」
「誕生日じゃん。なんか腰が痛いって言ってたからいいかと思ってさ」
どうやら妻の冗談通り、バースデープレゼントということでした。
小学生の頃は手作りの物などをもらったことはありました。
でも中学校に入ると「乏しい小遣いなもんで、気持ちだけでもってことで」とごまかされるようになり、ここしばらくプレゼントらしいプレゼントをもらったことがなかったので、意外でした。
「ふうん、座り心地いいわね。私がもらっちゃおうかな」
ふざける妻から貴重なプレゼントを守り通しました。
そうして今年(2020年)。
正月の帰省をしそこなった息子は、コロナ騒ぎで帰ってこれなくなっていました。
そんな6月、妻の誕生日プレゼントに日傘(日焼けを気にしているから、とのこと)と併せて目をマッサージする機械が送られてきました。
「ん? これは何だ?」
妻がお礼の電話をしていたので、替わってもらいました。
「父の日でしょ? 目がかすむって言ってたじゃん」
電話でぶっきらぼうに答える息子。
前にLINEのやり取りで、スマホの画面を見るのもなかなか大変だ、みたいな書き込みをしたのを覚えていたようです。
「...いや、父の日まで...ありがとうな」
サプライズプレゼントにちょっと感極まっていました。
「いや、働いてみるとさ、稼ぐのって大変だと思って、今までずいぶん金使わせたと思ったからさ...」
照れ臭そうに言う息子に思わず胸が熱くなり、妻に電話を替わってもらうのがやっとでした。
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