<この体験記を書いた人>
ペンネーム:向日葵
性別:女
年齢:52
プロフィール:脳梗塞の夫と二人の子供と暮らす、働くお母さんです。
8年前に夫が脳梗塞に倒れてから、夫と子供たちを養うために働きづめだった私。
ですが、現在は当時高校生だった長女が家を離れて就職、一人で生活しています。
とはいえ、末の息子はまだ中学1年生。
公立の中学に通っていますが、毎月の学校納入費や部活動にかかる諸々の経費は小学校の3倍の金額で、ばかになりません。
それに高校受験も控えているのですから、入学費用も貯めておく必要があります。
まだまだ頑張って働かなくてはと思いますが、更年期を迎え高血圧や腰や肩、膝などの不調も頻発。
会社の人間関係でもトラブルがあり、肉体的にも精神的にもキツイ状態が続いていました。
そんな時、うれしいことがありました。
長女が嬉しいサプライズ・プレゼントを用意してくれたのです。
私が夜勤、娘は昼勤で生活時間帯がずれているため、緊急のとき以外はLINEで連絡を取り合うことにしています。
ある日の夕方、目が覚めてスマホを見てみると、娘からのLINEが入っていました。
「お母さん、この前見に行ったミュージカルの舞台版のチケットが手に入ったから、一緒に見に行かない?」
送られてきた文字に、心が踊りました。
そのミュージカルとは、今若い女性層を中心に大人気のオンライン・ゲームが原作。
いわゆる「2.5次元ミュージカル」と言われるものです。
小説や映画などのエンタメが大好きな私が喜びそうだ、と娘が誘ってくれて見に行ったのですが、これがとても素晴らしく、すっかりファンになっていました。
その時に「またいつか二人で見に来たいね」と言っていたのですが、娘はそれを気にかけていてくれたようです。
「もちろん、行くよ!」と、二つ返事で返信しました。
今回は、ミュージカルではなく舞台版ですが、ネットで情報収集してみたところ、幕末が舞台でストーリー的にもかなり面白そうでした。
現金なもので、その娘からのサプライズで、日ごろの疲れや憂鬱な気分が一気に吹っ飛んでしまいました。
その後も、舞台の日程や場所、何時の電車に乗って、どこで落ちあうかなど、細かいやりとりを時間差のLINEで行い、いよいよ当日。
電車に揺られること1時間あまり、途中の駅で娘が電車に乗り込んで来ました。
私が手を振って合図をすると、娘はニコッと嬉しそうに笑って歩み寄って来ました。
幸い隣の席が空いていたので、母子二人で並んで着席。
思えば、娘と顔を合わせるのは実に半年ぶり。
元気そうな様子にホッとしつつも、こうして私のために、骨を折って色々手配してくれたことに、心から感謝しました。
「今日は、色々ありがとうね。お母さん、興奮して眠れなかったよ」と私がおどけていうと、娘は「だと思った!」とうれしそうに笑います。
ただそれだけのこと。
...なのに、なんだか幸せすぎて、思わず目頭が熱くなってしまいました。
8年前、夫が脳梗塞で倒れた時、私は専業主婦で長女は大学受験を控えた高校生でした。
受ける大学も決まっていましたが、経済的な理由から急遽進学を諦めて、高校に通いながら医療事務の資格を取り、卒業後就職して家計を助けてくれました。
その長女が、私のために入手困難なチケットを取り、こうして一緒に連れて行ってくれる。
辛いこともあったけれど、今も大変だけれど、この瞬間にすべてが報われたような気がしました。
そうして見に行った舞台は...ストーリーも役者さんの演技も殺陣も舞台装置も、目から鱗がぽろぽろ落ちるほど素晴らしいもの。
涙腺が弱くなっていた私はハンカチを握りしめて、感動の涙を流したのでした。
娘と二人、水入らずで楽しい舞台をたっぷり堪能し、美味しい食事をして幸せいっぱいで帰宅。
おかげで、これからもまだまだ頑張れそうです。
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